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目次
1. 認知症は「予防できる時代」へ
2. 習慣1:週150分の有酸素運動
3. 習慣2:脳を守る食事パターン
4. 習慣3:質のよい睡眠を確保する
5. 習慣4:人とのつながりを大切にする
6. 習慣5:血圧・血糖・コレステロールを管理する
7. 習慣6:知的好奇心を持ち続ける
8. 習慣7:耳の健康を守る
9. まとめ ― 完璧を目指さず、できることから
認知症は「予防できる時代」へ
「認知症は防げない」と思っていませんか?実は、最新の研究では認知症の危険因子のうち約45%が「修正可能」であることがわかっています。
2024年にランセット委員会が発表した報告書では、14の修正可能な危険因子が特定されました。これらに適切に対処すれば、認知症の発症を遅らせたり、場合によっては防いだりできる可能性があるのです。
この記事では、その中でも特に日常生活に取り入れやすい7つの習慣を紹介します。
習慣1:週150分の有酸素運動
運動は認知症予防において、最もエビデンス(科学的根拠)が豊富な対策のひとつです。
世界保健機関(WHO)は、成人に対して「週150分以上の中等度の有酸素運動」を推奨しています。中等度とは、「少し息が弾むけれど会話ができる程度」の強さ。ウォーキング、サイクリング、水泳、軽いジョギングなどが該当します。
運動が脳に良い理由はいくつかあります。まず、脳の血流が増えて、神経細胞に酸素と栄養が行き届きます。次に、脳の成長因子(BDNF)が増え、新しい神経回路を作りやすくなります。さらに、記憶をつかさどる「海馬」の萎縮を防ぐ効果も報告されています。
週150分というと大変に聞こえますが、1日あたりに換算すると約20分。通勤で一駅分歩く、昼休みに散歩する、エレベーターの代わりに階段を使う。こうした工夫の積み重ねで十分に達成できます。
習慣2:脳を守る食事パターン
認知症予防に注目されている食事パターンのひとつが「MIND食(マインド食)」です。これは地中海食とDASH食(高血圧予防の食事法)を組み合わせたもので、アメリカのラッシュ大学の研究チームが考案しました。
MIND食で積極的に摂りたい食品は、緑黄色野菜(週6回以上)、その他の野菜(毎日)、ナッツ類(週5回以上)、ベリー類(週2回以上)、豆類(週3回以上)、全粒穀物(毎日)、魚(週1回以上)、鶏肉(週2回以上)、オリーブオイル、少量のワイン(飲む方は1日1杯まで)です。
一方、控えたい食品は、バターやマーガリン、チーズ、赤身肉、揚げ物、菓子類です。
日本の食文化に合わせるなら、「和食+青魚+緑黄色野菜たっぷり」のイメージが近いでしょう。毎食を完璧にするのは難しいので、「今週は青魚を2回食べよう」「朝食にナッツを加えよう」など、小さな目標から始めてみてください。
習慣3:質のよい睡眠を確保する
睡眠中の脳では、「グリンパティック・システム」と呼ばれる老廃物の排出機構が活発に働いています。このシステムは、アルツハイマー型認知症の原因とされるアミロイドβを脳外へ洗い流す役割を担っています。
つまり、質のよい睡眠は「脳の大掃除」の時間。慢性的な睡眠不足は、アミロイドβの蓄積を加速させる可能性があるのです。
睡眠の質を高めるためのポイントをいくつか紹介します。毎日同じ時間に起きることで体内時計を整えること。寝る1〜2時間前にぬるめのお風呂に入ること。寝室を暗く涼しく(18〜22℃)すること。寝る前のスマートフォンやパソコンの使用を控えること。そしてカフェインは午後2時以降できるだけ摂らないことです。
理想的な睡眠時間は6〜8時間とされていますが、短すぎも長すぎもリスクとなるため、自分に合った睡眠時間を見つけることが大切です。
習慣4:人とのつながりを大切にする

社会的孤立は、認知症の大きなリスク因子のひとつです。人と会話し、表情を読み、相手の気持ちを想像する ― この一連のプロセスは、脳のさまざまな領域を同時に活性化させます。
反対に、一人きりの時間が長く続くと、脳への刺激が減るだけでなく、うつ症状のリスクも高まります。うつ病は認知症の危険因子のひとつでもあります。
特別なことをする必要はありません。家族や友人と定期的に連絡を取ること、地域の集まりやサークルに参加すること、趣味のグループに加わること、ボランティア活動をしてみること。こうした日常的な人とのつながりが、脳を守る大きな力になります。
習慣5:血圧・血糖・コレステロールを管理する
高血圧、糖尿病、高コレステロール ― これらの生活習慣病は、血管性認知症だけでなく、アルツハイマー型認知症のリスクも高めることがわかっています。
特に40代〜50代の「中年期」に高血圧を放置すると、認知症リスクが約1.6倍になるという報告もあります。
健康診断を定期的に受け、異常が見つかったら放置しないことが基本です。薬を処方された場合は自己判断で中断せず、医師の指示に従って継続することが重要です。
習慣6:知的好奇心を持ち続ける

「脳は使えば使うほど強くなる」という表現がありますが、これは科学的にも裏付けられています。新しいことを学んだり、頭を使う活動をしたりすることで、脳内の神経ネットワークが強化され、認知症に対する「認知予備力」が高まります。
認知予備力とは、脳にある程度のダメージがあっても、別の神経回路で補える力のこと。教育歴が長い人や知的活動を続けている人は、認知予備力が高い傾向にあります。
おすすめの知的活動としては、読書、楽器の演奏、語学学習、パズルやボードゲーム、絵を描くこと、料理の新しいレシピに挑戦すること。「好きだから続けられる」という活動がベストです。
習慣7:耳の健康を守る
意外に思われるかもしれませんが、難聴は認知症の修正可能な危険因子の中で最も影響が大きいとされています。ランセット委員会の報告では、難聴への対応だけで認知症リスクを約7%低減できる可能性が示されています。
聴力が低下すると、脳への音声刺激が減り、言葉を処理する脳の領域が委縮しやすくなります。また、会話が困難になることで社会的孤立にもつながります。
40歳を過ぎたら聴力検査を定期的に受け、難聴が見つかったら適切な補聴器の使用を検討しましょう。大きな音への長時間の曝露(イヤホンの音量など)にも注意が必要です。
まとめ ― 完璧を目指さず、できることから
7つの習慣をすべて完璧にこなす必要はありません。大切なのは、「ひとつでも、今日から始めてみること」です。
今回の7つの習慣をおさらいすると、週150分の有酸素運動、脳を守る食事パターン(MIND食)、質のよい睡眠、人とのつながり、生活習慣病の管理、知的好奇心、そして耳の健康です。
どれも特別な道具やお金がかかるものではありません。自分に合った方法で、無理なく続けられる習慣を見つけてみてください。次の記事では、「家族が認知症かもしれない」と感じたときの具体的な対応方法をお伝えします。
よくある質問
Q1. サプリメントで認知症を予防できますか?
回答: 現時点では、特定のサプリメントが認知症を予防するという確実なエビデンスはありません。DHA・EPAやビタミンE、イチョウ葉エキスなどが話題になりますが、大規模な臨床試験では明確な予防効果は証明されていません。基本はバランスの良い食事から栄養を摂ることで、不足が疑われる場合に医師と相談の上で検討するのがよいでしょう。
Q2. お酒は認知症に良いのですか、悪いのですか?
回答: 少量の飲酒(1日ワイン1杯程度)は認知症リスクを下げるとする研究がある一方、過度の飲酒は明らかにリスクを高めます。最近の研究では、アルコールに「安全な量」はないとする見解も増えています。飲む場合は「少量にとどめる」、飲まない方が無理に始める必要はありません。
Q3. 脳トレアプリは効果がありますか?
回答: 脳トレアプリで鍛えたスキル(例えば数字の記憶)は向上しますが、それが日常生活の認知機能全体の改善につながるかどうかは議論が分かれています。脳トレよりも、運動・社会参加・新しい学びなど複合的な活動の方が、認知症予防のエビデンスは強いとされています。楽しめる範囲で取り入れるのは良いことですが、過信しすぎないようにしましょう。
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監修:Dr.T
参考文献:
1. Livingston G, et al. “Dementia prevention, intervention, and care: 2024 report of the Lancet standing Commission.” Lancet. 2024.
2. Morris MC, et al. “MIND diet associated with reduced incidence of Alzheimer’s disease.” Alzheimers Dement. 2015.
3. World Health Organization. “Risk reduction of cognitive decline and dementia: WHO guidelines.” 2019.



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