認知症の45%は予防できる?Lancet 2024が示した「14の危険因子」を解説

予防医療

目次

  1. Lancet 2024 認知症予防レポートとは
  2. 14の修正可能な危険因子一覧
  3. 年代別に見る認知症リスク
  4. 今日からできる予防のセルフケア
  5. こんな症状があれば受診を
  6. まとめ
  7. よくある質問

「認知症は仕方ない」「歳をとれば誰でもなる」——そう思っていませんか?

実は、世界的に権威のある医学誌 The Lancet(ランセット) の認知症予防委員会が2024年に発表した最新レポートで、驚くべき数字が報告されました。認知症全体の約45%が、14の「修正可能な危険因子」によって説明できるというのです。

つまり、生活習慣や環境を変えることで、認知症のリスクを大きく減らせる可能性があるということ。しかも2020年の前回報告(12因子・40%)から、新たに2つの因子が加わり、予防可能性はさらに広がっています。

この記事では、その14の危険因子を年代別に整理し、30代〜60代の方が「今すぐ始められること」をお伝えします。


1. Lancet 2024 認知症予防レポートとは

The Lancet は1823年に創刊された世界五大医学誌のひとつです。その中に設置された「認知症予防・介入・ケア常設委員会」は、2017年・2020年・2024年と継続的にレポートを更新してきました。

2024年版では、英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)のGill Livingston教授らが中心となり、世界中のエビデンスを総合的に評価。その結果、修正可能なリスク因子は従来の12個から 14個 に増え、認知症全体に対する説明割合が 40%から45% へと引き上げられました。

新たに追加されたのは「視力低下」と「高LDLコレステロール」の2つです。


2. 14の修正可能な危険因子一覧

以下が、Lancet 2024で報告された14の危険因子と、それぞれの寄与割合です。

若年期(18歳未満)

危険因子寄与割合
教育水準の低さ5%

中年期(18〜65歳)

危険因子寄与割合
聴力低下7%
高LDLコレステロール 🆕7%
うつ病3%
頭部外傷3%
運動不足2%
糖尿病2%
高血圧2%
喫煙2%
肥満1%
過度の飲酒1%

高齢期(66歳以上)

危険因子寄与割合
社会的孤立5%
大気汚染3%
視力低下 🆕2%

合計:約45%


3. 年代別に見る認知症リスク

このレポートの大きな特徴は、「どの年代で何に気をつけるべきか」が明確に示されている点です。

30〜40代の方へ: 中年期は最もリスク因子が集中する時期です。特に「聴力」と「LDLコレステロール」がそれぞれ7%と高い寄与率を示しています。健康診断でコレステロール値が高めと言われたら、「まだ大丈夫」と放置せず、食生活の見直しを始めましょう。

50〜60代の方へ: 高血圧・糖尿病・肥満など、いわゆる生活習慣病が認知症にも直結します。また「うつ病」も3%の寄与率があり、メンタルヘルスへの配慮も認知症予防の一環です。

すべての年代に共通して: 運動不足と社会的孤立は、どの年代からでも改善できる因子です。


4. 今日からできる予防のセルフケア

14の危険因子を見ると、「自分で変えられるもの」が多いことに気づきます。以下に、日常生活で取り入れやすい予防策をまとめました。

からだを動かす: 週150分の中強度の有酸素運動(早歩き・自転車など)が推奨されています。毎日20分程度のウォーキングから始めてみてください。

耳と目のケアを怠らない: 聴力低下(7%)と視力低下(2%)は、補聴器や眼鏡で補正することでリスクを下げられる可能性があります。「少し聞こえにくいかな」と感じたら、早めに耳鼻科を受診しましょう。

コレステロール値を管理する: LDLコレステロールが新たな危険因子に加わりました。食事では飽和脂肪酸(脂身の多い肉・バター・菓子パンなど)を控え、魚・大豆・食物繊維を積極的に摂りましょう。

人とのつながりを保つ: 社会的孤立は高齢期の大きなリスクです。地域の活動に参加する、友人と定期的に連絡を取るなど、意識的に「人と話す機会」を作ることが大切です。

頭部を守る: 自転車やバイクではヘルメットを着用し、転倒しにくい生活環境を整えましょう。

お酒はほどほどに: 1日の飲酒量は純アルコール20g以内(ビール500ml程度)を目安に。休肝日も設けましょう。


5. こんな症状があれば受診を

以下のような変化に気づいたら、かかりつけ医や脳神経内科への相談をおすすめします。

  • 同じことを何度も繰り返し聞いてしまう
  • 約束や予定をよく忘れるようになった
  • 料理や買い物など、以前は問題なくできていた作業が難しくなった
  • 日付や曜日の感覚があやしくなった
  • 意欲がなくなり、趣味にも興味を示さなくなった

早期発見・早期介入が、進行を遅らせる鍵です。


6. まとめ

Lancet 2024の認知症予防レポートは、「認知症は運命ではなく、予防できる部分が大きい」ということを科学的に示しています。

14の修正可能な危険因子のうち、中年期(18〜65歳)に集中するものが10個もあります。つまり、30代〜60代の「今」の行動が、将来の認知症リスクを大きく左右するということです。

完璧を目指す必要はありません。まずは、健診結果を見直す、週に数回歩く習慣をつける、聞こえや見えの違和感を放置しない——そんな小さな一歩から始めてみてください。


よくある質問

Q1. 14の危険因子をすべて改善すれば、認知症にならないのですか?

回答: いいえ、45%が修正可能ということは、残りの55%は遺伝的要因や未知の因子によるものです。ただし、リスクを「大きく減らす」ことはできますので、予防行動には十分な意味があります。

Q2. 前回(2020年)のレポートから何が変わったのですか?

回答: 2020年版は12因子・40%でしたが、2024年版では「視力低下」と「高LDLコレステロール」の2つが新たに追加され、14因子・45%となりました。エビデンスの蓄積により予防可能性が広がったことを意味しています。

Q3. 聴力低下が7%と高い寄与率ですが、補聴器をつければ予防できますか?

回答: 補聴器の使用が認知症リスクを低減する可能性を示す研究が増えています。聴力の低下に気づいたら早めに対処することが重要です。完全な予防とは言い切れませんが、脳への刺激を維持するという意味で非常に有効と考えられています。

Q4. LDLコレステロールが高いと、なぜ認知症リスクが上がるのですか?

回答: LDLコレステロールが高い状態が続くと、脳の血管にも動脈硬化が起こり、脳への血流が低下します。これが脳の神経細胞にダメージを与え、認知機能の低下につながると考えられています。

Q5. 整形外科と認知症予防は関係ありますか?

回答: 大いにあります。運動不足(2%)、頭部外傷(3%)は整形外科に直結する因子です。また、膝や腰の痛みで運動ができなくなることが間接的に認知症リスクを高めます。痛みを適切に治療し、体を動かせる状態を維持することが予防につながります。


監修:Dr.T

参考文献:

  1. Livingston G, et al. Dementia prevention, intervention, and care: 2024 report of the Lancet standing Commission. The Lancet. 2024;404(10452):572-628.
  2. Alzheimer’s Disease International. Lancet Commission identifies two new risk factors for dementia. 2024.

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