認知症は「なってから」では遅い ― 30代から知っておきたい基礎知識

認知症

目次

  1. 認知症ってどんな病気?
  2. 認知症の4つのタイプ
  3. なぜ今、30代〜60代が知るべきなのか
  4. 認知症が起こるメカニズム
  5. 「治る認知症」もある?
  6. まとめ ― 知ることが最大の予防

認知症ってどんな病気?

「認知症」と聞くと、遠い将来の話のように感じるかもしれません。でも実は、脳の変化は発症の20年以上前から静かに始まっていることがわかっています。

認知症とは、脳の神経細胞が何らかの原因でダメージを受け、記憶力・判断力・コミュニケーション能力などが低下し、日常生活に支障が出る状態の総称です。「病名」というよりも、さまざまな脳の病気によって引き起こされる「症状のまとまり」と考えるとわかりやすいでしょう。

厚生労働省の推計では、2025年には65歳以上の約5人に1人が認知症になるとされています。決して他人事ではありません。

認知症の4つのタイプ

認知症にはいくつかの種類がありますが、特に知っておきたい4つのタイプを紹介します。

アルツハイマー型認知症(全体の約60〜70%)

最も多いタイプです。脳にアミロイドβ(ベータ)というたんぱく質が蓄積し、神経細胞が少しずつ壊れていきます。初期には「最近のできごと」を忘れやすくなり、ゆっくりと進行します。

血管性認知症(約15〜20%)

脳梗塞や脳出血など、脳の血管の病気が原因で起こります。高血圧や糖尿病といった生活習慣病と深い関係があるのが特徴です。このタイプは生活習慣の改善で予防しやすいとされています。

レビー小体型認知症(約10〜15%)

脳に「レビー小体」という異常なたんぱく質がたまることで起こります。幻視(実際にはいないものが見える)や、日によって症状の波が大きいのが特徴です。パーキンソン病に似た手足の震えや歩行障害を伴うこともあります。

前頭側頭型認知症

脳の前頭葉や側頭葉が萎縮するタイプです。性格が急に変わったり、社会的なルールを守れなくなったりすることがあります。比較的若い年齢(50〜60代)で発症することもある点に注意が必要です。

なぜ今、30代〜60代が知るべきなのか

もの忘れと認知症の対比イラスト

「認知症の勉強は70歳を過ぎてからで十分でしょ?」と思った方、ここがとても大切なポイントです。

アルツハイマー型認知症の場合、脳内のアミロイドβの蓄積は発症の約20〜25年前から始まるとされています。つまり、65歳で発症する方の脳は、40代の時点ですでに変化が始まっている可能性があるのです。

また、2024年に医学誌『ランセット』に発表された研究では、認知症の危険因子のうち約45%は「修正可能」であることが示されました。高血圧、運動不足、社会的孤立、喫煙、過度の飲酒などは、生活習慣を変えることでリスクを下げられます。

30代〜60代は、まさに「予防に取り組める最適なタイミング」なのです。

認知症が起こるメカニズム

もの忘れと認知症の違いを示すイラスト

少し専門的な話になりますが、やさしく説明しますね。

私たちの脳には約1,000億個の神経細胞(ニューロン)があり、電気信号でお互いに情報をやりとりしています。認知症では、この神経細胞やそのつながり(シナプス)がダメージを受けることで、情報の伝達がうまくいかなくなります。

アルツハイマー型の場合は、「アミロイドβ」や「タウたんぱく質」が脳に蓄積することで神経細胞が壊れます。血管性認知症では、脳の血流が途絶えることで酸素や栄養が届かなくなり、神経細胞が死んでしまいます。

大切なのは、どのタイプの認知症も「突然発症する」わけではないということ。長い時間をかけて少しずつ進行していくからこそ、早い段階から脳の健康に気を配ることが重要です。

「治る認知症」もある?

意外に知られていませんが、認知症のような症状を引き起こす病気の中には、適切な治療で改善するものもあります。

たとえば、正常圧水頭症(脳脊髄液がたまって脳を圧迫する病気)、甲状腺機能低下症、ビタミンB12欠乏症、慢性硬膜下血腫などは、原因を取り除くことで症状が改善する可能性があります。

だからこそ、「年齢のせい」と自己判断せず、気になる症状があれば早めに専門医を受診することが大切です。

まとめ ― 知ることが最大の予防

認知症は遠い未来の話ではなく、今この瞬間の生活習慣が将来のリスクに直結しています。

この記事のポイントをおさらいしましょう。認知症にはアルツハイマー型・血管性・レビー小体型・前頭側頭型の4つの主要タイプがあります。脳の変化は発症の20年以上前から始まっています。そして危険因子の約45%は生活習慣の改善で修正可能です。

次の記事では、多くの方が気になる「もの忘れと認知症の違い」について詳しく解説します。

よくある質問

Q1. 認知症は遺伝しますか?

回答: 認知症の大部分は遺伝だけで決まるものではありません。たしかにアルツハイマー型認知症に関連する遺伝子(APOE4など)は知られていますが、その遺伝子を持っていても必ず発症するわけではなく、生活習慣の影響の方が大きいとされています。ごく一部に「家族性アルツハイマー病」という遺伝性の強いタイプがありますが、全体の1%未満です。

Q2. 若い人でも認知症になることはありますか?

回答: はい、65歳未満で発症する認知症を「若年性認知症」と呼びます。日本では約3.6万人が該当すると推計されています。前頭側頭型認知症やアルツハイマー型認知症が多く、仕事や家庭への影響が大きいため、早期発見と適切なサポートが特に重要です。

Q3. 認知症の検査はどこで受けられますか?

回答: まずはかかりつけ医に相談するのが第一歩です。そこから必要に応じて、神経内科や精神科、もの忘れ外来などの専門外来を紹介してもらえます。自治体の地域包括支援センターでも相談窓口を設けています。

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監修:Dr.T

参考文献:

  1. 厚生労働省「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」
  2. Livingston G, et al. “Dementia prevention, intervention, and care: 2024 report of the Lancet standing Commission.” Lancet. 2024.
  3. 日本神経学会「認知症疾患診療ガイドライン2017」

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