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目次
1. 誰もが経験する「あれ、何だっけ?」
2. 加齢によるもの忘れと認知症の決定的な違い
3. こんなサインが出たら要注意 ― 10のチェックポイント
4. 家庭でできるセルフチェックのコツ
5. 受診のタイミングと相談先
6. まとめ ― 不安を「行動」に変えよう
誰もが経験する「あれ、何だっけ?」
「あの俳優の名前、何だっけ……」「2階に何を取りに来たんだろう?」。こうしたもの忘れは、年齢を重ねれば誰でも経験します。30代後半くらいから少しずつ増え始め、40代・50代になると「もしかして認知症では?」と不安になる方も多いのではないでしょうか。
でも、安心してください。加齢に伴うもの忘れと認知症は、その性質がまったく異なります。この記事では、その違いを具体的にわかりやすく解説します。
加齢によるもの忘れと認知症の決定的な違い
加齢によるもの忘れと認知症の最大の違いは、「体験そのものを覚えているかどうか」です。
加齢によるもの忘れの場合、昨日の夕食の「メニュー」を思い出せなくても、「夕食を食べたこと」自体は覚えています。ヒントをもらえば「ああ、そうだった!」と思い出せることがほとんどです。日常生活に大きな支障はなく、本人もの忘れを自覚しています。
認知症の初期症状の場合、夕食を「食べたこと自体」を忘れてしまいます。ヒントを出しても思い出せず、「食べてないよ」と言い張ることもあります。時間の経過とともに日常生活に支障が出始め、本人が忘れていることに気づきにくくなります。
もう少し具体的に比較してみましょう。
加齢のもの忘れでは、約束の「時間」を間違えることがありますが、認知症では約束をしたこと自体を忘れます。加齢では財布をどこに置いたか忘れますが、認知症では財布をなくしたと思い込み「誰かが盗んだ」と疑うことがあります。加齢では道順を一瞬迷いますが、認知症ではよく知っている道で迷子になります。
こんなサインが出たら要注意 ― 10のチェックポイント

以下の項目に心当たりがないか、ご自身やご家族について確認してみてください。
1つ目は、同じことを何度も聞いたり話したりするようになったこと。2つ目は、料理や買い物など慣れた作業で段取りがうまくいかなくなったこと。3つ目は、日付や曜日がわからなくなることが増えたこと。4つ目は、お金の管理(お釣りの計算や公共料金の支払い)で間違いが増えたこと。5つ目は、以前好きだった趣味や活動に興味を失ったこと。
6つ目は、身だしなみに無頓着になったこと。7つ目は、ものを置き忘れ、見つけられず人のせいにすることがあること。8つ目は、テレビのドラマや本の筋が追えなくなったこと。9つ目は、性格が変わったと周囲から言われるようになったこと。10番目は、時間や場所の見当がつきにくくなったことです。
3つ以上に当てはまる場合や、半年以内に明らかに増えた項目がある場合は、一度専門医に相談することをおすすめします。
家庭でできるセルフチェックのコツ
「チェックリストを見ても、自分では判断しづらい」という方も多いと思います。そこで、家庭で気軽にできる観察のポイントを紹介します。
日記や手帳を活用する ― 毎日3行でもいいので日記をつけてみましょう。「今日何をしたか」をスムーズに書けるかどうかは、記憶力のよいバロメーターになります。また、数か月後に振り返ることで変化にも気づきやすくなります。
料理の手順を観察する ― 複数の品を同時進行で作れるかどうかは、「実行機能」と呼ばれる脳の力を反映します。手順が乱れたり、いつもの味と違ったりすることが続くなら、注意が必要です。
会話のキャッチボールを意識する ― 話題が途中で飛んだり、同じ話を短時間に繰り返したりする頻度を意識して観察してみましょう。
大切なのは、「責めるための観察」ではなく「早く気づいてあげるための見守り」だということ。温かい視点で見守りましょう。
受診のタイミングと相談先

「やっぱり少し心配だな」と思ったとき、最初の一歩を踏み出すのは勇気がいるものです。でも、早期に受診することには大きなメリットがあります。
早期受診のメリットとして、まず治療可能な原因(甲状腺疾患、ビタミン欠乏、正常圧水頭症など)を見つけられる可能性があります。次に、進行を遅らせる薬(ドネペジルなど)を早い段階から使える点。そして、本人の意思がしっかりしているうちに、将来の生活や財産管理について話し合えることです。
相談先の選び方としては、まずかかりつけ医に相談するのが自然です。そこから「もの忘れ外来」「神経内科」「精神科(老年科)」を紹介してもらえます。また、各市区町村の「地域包括支援センター」では、無料で相談を受け付けています。電話でも対応可能なところが多いので、気軽に連絡してみてください。
まとめ ― 不安を「行動」に変えよう
もの忘れのすべてが認知症ではありません。しかし、「いつもと違う」と感じたら、それは脳からの大切なサインかもしれません。
この記事のポイントです。加齢のもの忘れは「体験の一部」を忘れ、認知症は「体験そのもの」を忘れます。10のチェックポイントで客観的に観察することが有効です。そして早期受診は「治療可能な原因の発見」「進行の抑制」「将来への備え」につながります。
不安を抱え込まず、まずは身近な人や医療機関に相談してみてください。次の記事では、「認知症を予防する生活習慣」について、今日からできる具体策をお伝えします。
よくある質問
Q1. 健康診断で認知症の検査はできますか?
回答: 一般的な健康診断には認知症の検査は含まれていませんが、自治体によっては特定健診に認知機能チェックを追加しているところがあります。また、75歳以上の方は運転免許更新時に認知機能検査が義務づけられています。心配な場合は、かかりつけ医に「認知機能を調べてほしい」と伝えれば、簡易テスト(長谷川式やMMSEなど)を受けられます。
Q2. ストレスが多いと認知症になりやすいですか?
回答: 慢性的なストレスは、脳の海馬(記憶をつかさどる部分)にダメージを与えることがわかっています。長期間のストレスは認知症のリスクを高める要因のひとつとされています。ただし、ストレスそのものが直接認知症を引き起こすわけではなく、睡眠不足や食生活の乱れなど、ストレスに伴う生活習慣の悪化が間接的に影響します。
Q3. スマートフォンに頼りすぎると認知症になりますか?
回答: スマートフォンの利用自体が認知症を引き起こすという科学的根拠はありません。ただ、「調べればすぐわかるから覚えなくていい」という習慣が続くと、脳の記憶回路を使う機会が減る可能性はあります。大切なのは、デジタルツールを便利に活用しつつも、自分の頭で考えたり思い出したりする習慣を意識的に持つことです。
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監修:Dr.T
参考文献:
1. 日本神経学会「認知症疾患診療ガイドライン2017」
2. 厚生労働省「知ることからはじめよう みんなのメンタルヘルス」
3. Petersen RC, et al. “Practice guideline update: Mild cognitive impairment.” Neurology. 2018.



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