骨粗鬆症を防ぐ食事と運動――今日から始められるセルフケア【シリーズ⑤予防編】

セルフケア

目次

  1. 骨を強くする食事の基本
  2. カルシウムを効率よく摂るコツ
  3. ビタミンDとビタミンKの役割
  4. 骨を強くする運動とは
  5. 転倒を防ぐバランストレーニング
  6. 日常生活で気をつけたいこと
  7. まとめ
  8. よくある質問

シリーズ最終回となる今回は、食事と運動で骨粗鬆症を予防する方法をお伝えします。

骨粗鬆症は薬による治療だけでなく、毎日の生活習慣が大きく影響する病気です。「今さら始めても遅いのでは?」と思う方もいるかもしれませんが、何歳からでも効果はあります。今日からできることを、一つずつ取り入れていきましょう。


1. 骨を強くする食事の基本

骨の健康を守るために特に意識したい栄養素はカルシウム、ビタミンD、ビタミンK、たんぱく質の4つです。

カルシウムは骨の主成分です。日本人の多くはカルシウムの摂取量が推奨量に届いていないのが現状で、1日あたり700〜800mgを目標に摂ることが推奨されています。

ビタミンDはカルシウムの吸収を助けるパートナーです。いくらカルシウムを摂っても、ビタミンDが不足していると腸からの吸収効率が下がってしまいます。

ビタミンKは骨にカルシウムを定着させる「接着剤」のような役割を果たします。

たんぱく質は骨の内部構造を支えるコラーゲンの材料です。筋肉を維持して転倒を防ぐためにも欠かせません。

この4つをバランスよく摂ることが、骨を強くする食事の基本です。


2. カルシウムを効率よく摂るコツ

カルシウムが豊富な食品を具体的にご紹介します。

乳製品:牛乳コップ1杯(200ml)で約220mgのカルシウムが摂れます。ヨーグルトやチーズも手軽な供給源です。乳製品のカルシウムは吸収率が約40%と高いのが特徴です。

小魚:しらす、ちりめんじゃこ、干しえびなどは骨ごと食べられるため、カルシウムの宝庫です。ごはんにふりかけるだけで手軽に摂れます。

大豆製品:豆腐(特に木綿豆腐)、納豆、厚揚げなどもカルシウムを含んでいます。大豆に含まれるイソフラボンには、弱いながらもエストロゲンに似た作用があるため、閉経後の女性には特におすすめです。

緑黄色野菜:小松菜、チンゲン菜、水菜などはカルシウムが比較的豊富な野菜です。

1日の目標量700〜800mgを食事だけで摂ろうとすると、牛乳コップ1杯+ヨーグルト1個+豆腐半丁+小松菜のおひたし程度の組み合わせが目安です。無理なく毎日の食事に取り入れてみてください。


3. ビタミンDとビタミンKの役割

ビタミンDを多く含む食品は、鮭、さんま、しらす、きくらげ、卵黄などです。魚を食べる頻度を週2〜3回以上にすると、ビタミンDを効率よく摂ることができます。

もう一つ大切なのが日光浴です。ビタミンDは皮膚に紫外線があたることで体内で合成されます。1日15〜30分程度、手や腕に日光を浴びるだけで十分です。冬場や日焼け止めを常用している方はビタミンDが不足しがちなので、食事からの摂取を意識的に増やしましょう。

ビタミンKを多く含む食品の代表格は納豆です。納豆1パック(40〜50g)でビタミンKの1日必要量をほぼカバーできます。そのほか、ほうれん草、ブロッコリー、小松菜などの緑色の野菜にも含まれています。

なお、ワーファリン(ワルファリン)という血液をサラサラにする薬を飲んでいる方は、ビタミンKが薬の効果を弱めるため、納豆や緑色の野菜の摂取量について主治医に確認してください。

骨を強くするカルシウム食品と運動のイラスト
骨を強くする食事(左)と運動(右)

4. 骨を強くする運動とは

骨は適度な負荷がかかることで強くなるという性質があります。宇宙飛行士が無重力空間で骨密度が低下するのも、骨への負荷がなくなるためです。

骨を強くするのに効果的な運動は、荷重運動(かじゅううんどう)と呼ばれるものです。体重が骨にかかる運動を意味します。

ウォーキング:最も手軽で続けやすい荷重運動です。1日30分程度、週3〜5回を目安にしましょう。やや早歩き(少し息がはずむ程度)がおすすめです。

スクワット:太ももの筋肉と骨に効果的な負荷をかけられます。壁に手をつきながらでもOKです。1日10〜15回を2〜3セット行いましょう。

かかと落とし運動:つま先立ちになってから、トンとかかとを床に落とす簡単な運動です。かかとからの衝撃が骨に伝わり、骨密度の維持に役立ちます。1日30〜50回を目安にしてみてください。

階段の上り下り:エレベーターやエスカレーターの代わりに階段を使うだけでも、骨への良い刺激になります。

一方、水泳や自転車は体重が骨にかかりにくいため、骨密度を上げる効果は限定的です。ただし心肺機能や筋力の維持には有効ですので、他の荷重運動と組み合わせるとよいでしょう。


5. 転倒を防ぐバランストレーニング

骨粗鬆症の方が骨折する最大のきっかけは転倒です。骨を強くすると同時に、転ばない体づくりも大切です。

片足立ち:片足で立ってバランスをとる練習です。最初は壁や椅子の背もたれに手をそえて行いましょう。片足1分間を左右それぞれ1日3セットが目安です。

つま先立ち・かかと立ち:つま先立ちとかかと立ちを交互に行います。ふくらはぎとすねの筋肉を鍛え、バランス能力の向上に役立ちます。

体幹トレーニング:座った状態で背すじを伸ばし、おなかに軽く力を入れて10秒間キープします。体幹の安定性を高めることで、つまずいたときに体を支えやすくなります。

これらのトレーニングは特別な道具がいらず、自宅で毎日できます。テレビを見ながら、歯を磨きながらなど、日常の「ついで」に取り入れると続けやすくなります。


6. 日常生活で気をつけたいこと

食事と運動以外にも、日常生活の中で骨の健康を守るポイントがあります。

禁煙:喫煙は骨密度低下と骨折リスクの増加に直結します。禁煙はいつ始めても遅くありません。

節酒:適量のお酒は問題ありませんが、毎日多量に飲む方はカルシウムの排泄が増えるため注意が必要です。1日の目安はビール中瓶1本、日本酒1合程度までとされています。

転倒予防の環境整備:自宅の中で転びやすい場所をチェックしましょう。敷物やカーペットのめくれ、暗い廊下、浴室の滑りやすい床、コードの配線などが転倒の原因になることがあります。

適正体重の維持:やせすぎは骨粗鬆症のリスクです。過度なダイエットは避け、BMI 18.5〜25の範囲を目安に体重を管理しましょう。


7. まとめ

骨粗鬆症の予防は、毎日の食事と運動から始まります。カルシウム・ビタミンD・ビタミンK・たんぱく質を意識した食事、ウォーキングやスクワットなどの荷重運動、そして転倒予防のバランストレーニング。どれも特別なことではなく、今日からすぐに取り組めるものばかりです。

全5回にわたってお届けした骨粗鬆症シリーズはこれで最終回です。骨粗鬆症は「知って、調べて、対策する」ことで、骨折のリスクを大きく減らすことができます。気になることがあれば、ぜひお近くの整形外科で相談してみてくださいね。


よくある質問

Q1. カルシウムのサプリメントは飲んだ方がいいですか?

回答: まずは食事からカルシウムを摂ることを基本としてください。食事だけでは目標の700〜800mg/日に届かない場合は、サプリメントで補うのもひとつの方法です。ただし、カルシウムの過剰摂取(1日2,000mg以上)は腎臓結石などのリスクがありますので、適量を守りましょう。

Q2. 骨粗鬆症の予防にはどんな運動が一番効果的ですか?

回答: 骨に直接負荷がかかる「荷重運動」が最も効果的です。ウォーキング、ジョギング、階段昇降、スクワットなどがおすすめです。1日30分程度、週3〜5回を目安に無理なく続けることが大切です。水泳や自転車は骨への負荷が少ないため、骨密度の改善効果は限定的ですが、筋力維持には有効です。

Q3. 骨粗鬆症予防は何歳から始めるべきですか?

回答: 理想は10代〜20代のうちから骨密度のピークをできるだけ高くしておくことですが、何歳から始めても遅すぎることはありません。30代以降は骨密度が徐々に低下するため、食事・運動・生活習慣の見直しは早ければ早いほど効果的です。特に40代以降の方は、定期的な骨密度検査と合わせて取り組むことをおすすめします。

合わせて読みたい

骨粗鬆症の治療法と薬の種類――整形外科医がやさしく解説【シリーズ④治療・薬編】
骨粗鬆症の治療薬にはどんな種類がある?ビスホスホネート・デノスマブ・テリパラチドなど、骨吸収抑制薬から骨形成促進薬まで、副作用や治療期間を含めて整形外科医がやさしく解説します。
骨粗鬆症は「静かに進む病気」――30代から始める骨の健康対策【シリーズ①基礎知識編】
骨粗鬆症は痛みがないまま進行する「静かな病気」。骨密度のピークは30代前半で、その後は低下の一途。整形外科医が骨のしくみ・リスク因子・予防の第一歩をやさしく解説します。
骨粗鬆症は予防できる|カルシウムとビタミンDの正しい摂り方で骨を守ろう
骨粗鬆症を防ぐカルシウムとビタミンDの正しい摂り方を医師監修で解説。必要量・食品例・吸収を高めるコツ・荷重運動・骨密度検査の目安まで、30〜60代向けにわかりやすくまとめました。
60代からの骨粗しょう症予防|骨密度を守る食事と運動の新常識
60代は骨密度が急激に低下する時期。カルシウム・ビタミンD・ビタミンKの食事戦略と、かかと落とし・ウォーキングなどの荷重運動で骨折リスクを下げる方法を整形外科医が解説。骨密度検査のタイミングも紹介。

監修:Dr.T

参考文献:

  1. 日本骨粗鬆症学会「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版」
  2. 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
  3. 骨粗鬆症財団「骨粗鬆症の食事療法・運動療法」

コメント

タイトルとURLをコピーしました