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目次
- 加齢による頻尿とは?
- なぜ女性に多いのか──骨盤底筋のしくみ
- まず知っておきたい「正常」と「要注意」の目安
- 自宅でできる骨盤底筋トレーニング【基本編】
- 効果を高める応用トレーニング
- 日常生活でできる頻尿対策
- こんな症状があれば受診を
- まとめ
- よくある質問
1. 加齢による頻尿とは?
「最近、トイレが近くなった気がする」「夜中に何度も目が覚めてトイレに行く」──こうした悩みは、年齢を重ねた女性にとって非常に多いものです。
頻尿とは、一般的に1日8回以上トイレに行く状態を指します。また、夜間に1回以上トイレのために起きる場合は夜間頻尿と呼ばれます。
加齢にともなう頻尿の多くは、骨盤の底で膀胱(ぼうこう)や子宮を支えている筋肉──骨盤底筋(こつばんていきん)──が弱くなることで起こります。病気ではなく「からだの変化」として起きているケースがほとんどなので、適切なトレーニングで改善が期待できるのが心強いポイントです。
2. なぜ女性に多いのか──骨盤底筋のしくみ
骨盤底筋は、骨盤の底をハンモックのように張っている筋肉の総称です。膀胱・子宮・直腸をしっかり下から支え、尿道をキュッと締める役割を担っています。
女性は男性に比べて尿道が短いうえ、妊娠・出産で骨盤底筋に大きな負荷がかかります。さらに閉経後の女性ホルモン(エストロゲン)の低下によって筋肉や粘膜が薄く弱くなるため、加齢とともに頻尿や尿もれが起きやすくなるのです。
つまり、骨盤底筋を意識的に鍛え直すことが、頻尿改善のカギになります。
3. まず知っておきたい「正常」と「要注意」の目安
トレーニングを始める前に、自分の状態を把握しておきましょう。
正常の目安
- 日中のトイレ回数:5〜7回程度
- 夜間のトイレ回数:0〜1回
- 1回の排尿量:200〜400mL程度
こんなときは「加齢性の頻尿」かも
- 日中8回以上トイレに行く
- 夜中に2回以上起きる
- 急に強い尿意がきて我慢しにくい(切迫感)
- 咳やくしゃみで少し漏れる(腹圧性尿失禁)
上記に当てはまる方は、まずこの記事のトレーニングを試してみてください。ただし、血尿がある・排尿時に痛みがある・急激に悪化したという場合は、別の病気の可能性がありますので早めに泌尿器科を受診しましょう。
4. 自宅でできる骨盤底筋トレーニング【基本編】
国際尿禁制学会(ICS)のガイドラインでも、骨盤底筋トレーニング(PFMT:Pelvic Floor Muscle Training)は女性の頻尿・尿失禁に対する第一選択の治療法として推奨されています。薬を使わず、自宅で行えるのが大きなメリットです。
ステップ1:骨盤底筋の場所を確認する
まずは「どこを締めるか」を正しく知ることが大切です。
確認方法:
トイレで排尿中に、途中で尿を止めてみてください。そのとき使った筋肉が骨盤底筋です。ただし、これはあくまで場所を確認するためだけに行い、毎回の排尿時に繰り返すのはやめましょう(膀胱の機能に悪影響を及ぼす場合があります)。
もうひとつの確認方法として、おならを我慢するイメージで肛門をキュッと締める感覚を探してみてください。このとき、腟(ちつ)のあたりも一緒に引き上がる感覚があれば正解です。
ステップ2:基本の「締める・ゆるめる」エクササイズ
【やり方】
- 仰向けに寝て、両膝を立てます。
- おなか・太もも・お尻の力は抜いたまま、骨盤底筋だけをキュッと締めます。
- 5秒間キープしたら、ゆっくり力を抜いて10秒間リラックスします。
- これを10回×3セット、1日に行います。
ポイント:
- 息を止めないでください。自然な呼吸を続けながら行いましょう。
- おなかに力が入ってしまう方は、おへその下に手を当てて、おなかが硬くならないか確認しながら行うとよいです。
- 最初は5秒キープが難しければ、2〜3秒から始めてかまいません。
ステップ3:慣れてきたら姿勢を変えて
基本の仰向けに慣れたら、次のステップとして座った姿勢や立った姿勢でも同じエクササイズを行いましょう。日常生活に近い姿勢で鍛えることで、実際の場面で筋肉が働きやすくなります。
- 椅子に座って: 背筋を伸ばし、足を肩幅に開いて座る。そのまま同じ「締める・ゆるめる」を行う。
- 立って: 足を肩幅に開き、軽く膝をゆるめた姿勢で行う。
5. 効果を高める応用トレーニング
基本の動きに慣れたら、以下のバリエーションを取り入れると効果がさらに高まります。
速い締めトレーニング(急速収縮)
骨盤底筋をパッと素早く締めて、すぐにゆるめる動きを10回連続で行います。これは、咳やくしゃみなど突発的な腹圧に対応する力を養います。
ブリッジ+骨盤底筋


- 仰向けで両膝を立てます。
- 骨盤底筋を締めながら、お尻をゆっくり持ち上げます(肩から膝が一直線になる高さまで)。
- 5秒キープしたら、ゆっくり下ろします。
- 10回×2セットを目安に行いましょう。
お尻(臀筋)と骨盤底筋を連動させることで、骨盤全体の安定性が高まります。
スクワット+骨盤底筋

- 足を肩幅に開いて立ちます。
- 息を吸いながらゆっくり腰を落とし、息を吐きながら骨盤底筋を締めつつ立ち上がります。
- 10回×2セットを目安に。
下半身の筋力強化と骨盤底筋トレーニングを同時に行える、効率的なメニューです。
6. 日常生活でできる頻尿対策
トレーニングと合わせて、生活習慣の見直しも効果的です。
水分の摂り方を工夫する: 水分を極端に減らす必要はありませんが、寝る2〜3時間前からは水分を控えめにすると夜間頻尿が改善しやすくなります。カフェイン(コーヒー・緑茶)やアルコールは膀胱を刺激しやすいので、夕方以降は控えるのがおすすめです。
膀胱トレーニング(膀胱訓練): 尿意を感じたらすぐにトイレに行くのではなく、最初は5分だけ我慢してみます。これを少しずつ延ばし、最終的に2〜3時間おきの排尿リズムを目指します。膀胱の容量を回復させる効果があります。
冷えを防ぐ: 下半身の冷えは膀胱を刺激して頻尿を悪化させます。腹巻きやレッグウォーマーなどで下腹部や足元を温めましょう。
便秘を解消する: 便秘で直腸に便がたまると、隣り合う膀胱が圧迫されて頻尿を招きます。食物繊維と水分を適度に摂り、排便リズムを整えることも大切です。
7. こんな症状があれば受診を
骨盤底筋トレーニングは安全で効果的な方法ですが、次のような症状がある場合は自己判断せず、泌尿器科や婦人科を受診してください。
- 血尿がある
- 排尿時に痛みや灼熱感がある
- 急激に頻尿が悪化した
- 尿が出にくい・残尿感が強い
- トレーニングを2〜3か月続けても改善しない
頻尿の裏に膀胱炎、過活動膀胱、骨盤臓器脱(子宮や膀胱が下がってくる状態)などが隠れていることもあります。早めの受診で適切な治療につなげましょう。
8. まとめ
加齢にともなう女性の頻尿は、多くの場合骨盤底筋の衰えが原因です。骨盤底筋トレーニングは国際的なガイドラインでも推奨されている第一選択の対策で、自宅で・道具なしで・いつでも始められます。
大切なのは正しいフォームで、毎日コツコツ続けること。効果を実感するまでには8〜12週間ほどかかるのが一般的ですので、あせらず取り組んでみてください。
トイレの回数が減るだけでなく、外出や旅行を気兼ねなく楽しめるようになったり、夜ぐっすり眠れるようになったりと、生活の質(QOL)の向上につながります。「年だから仕方ない」とあきらめず、今日から始めてみましょう。
よくある質問
Q1. 骨盤底筋トレーニングは何歳から始めても効果がありますか?
回答: はい、何歳からでも効果が期待できます。筋肉は年齢に関係なくトレーニングで強化できることが研究で示されています。70代・80代の方でも、継続することで頻尿や尿もれの改善が報告されています。
Q2. 効果が出るまでどのくらいかかりますか?
回答: 個人差はありますが、一般的には毎日続けて8〜12週間で変化を感じ始める方が多いです。最初の2〜3週間は「締める感覚がわかってきた」という段階で、実際にトイレの回数が減るなどの効果は2〜3か月後が目安です。
Q3. トレーニング中にお腹やお尻に力が入ってしまいます。間違っていますか?
回答: おなかやお尻にグッと力が入る場合は、骨盤底筋以外の筋肉を使っている可能性があります。最初は仰向けの姿勢で、おなかに手を当てながら行い、おなかが硬くならないことを確認しましょう。「おならを我慢する」イメージで軽く締めるところから練習すると、正しい感覚をつかみやすくなります。
Q4. 頻尿が気になって水分を控えていますが、大丈夫ですか?
回答: 水分を極端に減らすのは脱水や膀胱炎のリスクを高めるため、おすすめできません。1日あたり1.0〜1.5リットル程度の水分は確保しつつ、就寝前2〜3時間の摂取を控えめにするのが効果的です。カフェインやアルコールを含む飲み物を減らすだけでも改善する場合があります。
Q5. 尿もれパッドを使いながらトレーニングしても問題ありませんか?
回答: まったく問題ありません。尿もれパッドは安心して外出や運動をするための便利なアイテムです。トレーニングの効果が出てくれば、パッドが不要になる方も多くいらっしゃいます。パッドに頼ることに引け目を感じる必要はありません。
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監修:Dr.T
参考文献:
1. Dumoulin C, et al. Pelvic floor muscle training versus no treatment, or inactive control treatments, for urinary incontinence in women. Cochrane Database Syst Rev. 2018;10:CD005654.
2. 日本排尿機能学会 編.『過活動膀胱診療ガイドライン 第3版』リッチヒルメディカル, 2022.
3. Bo K, et al. An International Urogynecological Association (IUGA)/International Continence Society (ICS) joint report on the terminology for the conservative and nonpharmacological management of female pelvic floor dysfunction. Neurourol Urodyn. 2017;36(2):221-244.



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