この記事をスマホで読む
目次
- 70代の体——「守る」と「使う」のバランス
- 耳を守る——内耳の毛は一度折れたら戻らない
- 消化器をいたわる——胃腸・肝臓・腎臓の正しいケア
- 肌のバリア機能を保つ——乾燥と肌荒れの予防
- 転ばない体をつくる——バランス感覚と筋力の維持
- 自宅でできるセルフケア習慣
- こんな症状があれば受診を
- まとめ
1. 70代の体——「守る」と「使う」のバランス
70代は、体の各器官がこれまでの長い年月で蓄積したダメージをはっきりと感じ始める年代です。「聞こえにくい」「食べたものがもたれる」「肌が乾燥してかゆい」「つまずきやすい」。こうした日常の「ちょっとした困りごと」が増えてきます。
しかし、70代の体も正しく使えばまだまだ元気に機能します。大切なのは、「無理に若いころと同じように使おうとしない」ことと、「使わなすぎて衰えさせない」こと。この二つのバランスをとることです。
この記事では、70代で特に意識したい耳・消化器・肌・バランス感覚について、体のしくみとセルフケアの方法をやさしく解説します。
2. 耳を守る——内耳の毛は一度折れたら戻らない
音を感じ取る耳のしくみは、とても繊細にできています。耳に届いた音は、鼓膜を振動させ、「ツチ骨」「キヌタ骨」「アブミ骨」という三つの小さな骨を経由して、内耳へ伝わります。この三つの骨が音の振動を20倍以上に増幅し、わずかな音でも聞き取れるようにしています。
内耳にある「蝸牛(かぎゅう)」の中には、「有毛細胞」と呼ばれる感覚毛を持つ細胞が並んでいます。この細胞が音の振動をキャッチして、脳に電気信号として送ることで、私たちは音を「聞く」ことができます。
ここで知っておいてほしい重要な事実があります。この有毛細胞の毛は、一度折れたら二度と元には戻りません。大きな音に長時間さらされると、有毛細胞がダメージを受けて「難聴」になる危険性があります。
70代では、加齢による聴力低下(加齢性難聴)に加えて、長年の騒音暴露の影響が重なり、聞こえにくさを感じる方が増えます。
耳を守るためにできること
テレビやラジオの音量は必要以上に上げないようにしましょう。ヘッドホンやイヤホンの使用はできるだけ控え、使う場合は音量を下げて短時間にとどめることが大切です。「聞こえにくいから音量を上げる」という悪循環に入らないよう、早めに耳鼻科で聴力検査を受けることをおすすめします。補聴器の使用をためらう方もいますが、早い段階から使い始めることで、脳の聴覚機能の衰えを防ぐ効果があるとされています。
3. 消化器をいたわる——胃腸・肝臓・腎臓の正しいケア
食べ物は口から入って約10メートルもの消化管を通り、栄養として体に吸収されます。胃は食べ物をドロドロのかゆ状にする袋で、食べ物が入ると容積が0.05リットルから1.2〜1.6リットルにまで膨らみます。小腸の内部の表面積はテニスコート1面分にもなり、効率よく栄養を吸収しています。
70代になると、胃酸の分泌量が減り、消化のスピードが遅くなります。食後の胃もたれや食欲低下を感じやすくなるのはこのためです。
肝臓は体内最大の臓器で、500種類以上の化学反応を行う「化学工場」です。栄養素の貯蔵・分解・合成、有害物質の無害化など、多くの役割を担っています。肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、かなりの機能低下があっても自覚症状が出にくいのが特徴です。
腎臓は1日に約1,500リットルもの血液をろ過し、約200万個ものフィルター(腎小体)で老廃物を取り除いています。70代では腎機能の低下が進みやすく、薬の排泄にも影響するため注意が必要です。
消化器を守る食事のコツ
一度にたくさん食べるのではなく、少量をこまめに摂る「分食」がおすすめです。よく噛んで食べることで胃の負担を軽減できます。脂っこい食事を控え、消化のよい食品を選びましょう。水分は1日1.5リットル程度を目安にこまめに摂り、腎臓への負担を減らしましょう。アルコールの量を控えることは、肝臓にとって最も効果的なケアです。
4. 肌のバリア機能を保つ——乾燥と肌荒れの予防
皮膚は体のいちばん外側をおおう組織で、細菌や有害物質の侵入を防ぐバリア、外界の刺激を受け取るセンサー、汗による体温調節など多くの機能を持っています。
皮膚の表面には「角質層」があり、その上を「皮脂」がおおうことで、角質層からの水分の蒸発を防いでいます。ところが、洗剤を使った水仕事やお風呂でのゴシゴシ洗いで皮脂が失われると、角質層が乾燥して「肌荒れ」が起きます。
70代では皮脂の分泌量が大幅に減少し、肌が乾燥しやすくなります。乾燥した肌はバリア機能が低下するため、かゆみや湿疹が起きやすくなり、掻きこわしによる感染症のリスクも高まります。
肌を守るケア
保湿剤をこまめに塗ることが最も効果的です。とくに入浴後は角質層から水分が蒸発しやすいため、体を拭いたら5分以内に保湿剤を塗りましょう。お風呂の温度は38〜40度のぬるめに設定し、長湯を避けることも大切です。体を洗うときはナイロンタオルではなく、手のひらでやさしく洗うことで皮脂の過度な除去を防げます。
5. 転ばない体をつくる——バランス感覚と筋力の維持
70代で最も警戒すべきことの一つが「転倒」です。転倒による骨折は、寝たきりの大きな原因となります。
バランス感覚を支えているのは、内耳にある「三半規管」と「耳石器」です。三半規管は頭の回転運動を感知し、耳石器は頭の傾きを感知します。これらの中にある有毛細胞が、体の傾きや動きを脳に伝えることで、私たちはバランスを保っています。
70代では、この内耳のバランス機能に加えて、足腰の筋力、視力、足の裏の感覚など、バランスに関わるすべての要素が低下しています。
転倒予防の筋トレとバランス訓練
片足立ち: 壁や椅子の背に手を添えて、片足で10秒間立ちます。左右交互に3回ずつ。慣れてきたら手を離してみましょう。バランス感覚の維持に効果的です。
かかと上げ(カーフレイズ): 椅子の背につかまり、かかとを上げてつま先立ちになり3秒キープ。ゆっくり下ろします。15回×2セット。ふくらはぎの筋力と足首の安定性を高めます。
椅子からの立ち座り: 椅子に座った状態から、手を使わずにゆっくり立ち上がります。5回×2セット。太ももの大腿四頭筋を鍛え、立ち上がり動作を安定させます。
無理は禁物です。ふらつく場合は必ず手すりや壁のサポートを使い、安全を最優先にしてください。
6. 自宅でできるセルフケア習慣
朝: 起床後にコップ1杯の水をゆっくり飲む。片足立ち(各10秒×3回)でバランスチェック。
日中: 少量の食事をこまめに摂る。20〜30分程度の散歩で足腰を使う。テレビの音量に注意。
入浴後: 5分以内に全身に保湿剤を塗る。ぬるめのお湯(38〜40度)で短時間入浴。
夜: カーフレイズや椅子立ち座りなど、軽い筋トレを5〜10分。就寝前の深呼吸でリラックス。
7. こんな症状があれば受診を
以下の症状がある場合は、早めに医療機関を受診してください。
- 会話が聞き取りにくい場面が増えた(耳鼻科へ)
- 食事量が急に減った、体重が減り続けている
- 肌のかゆみがひどく、掻きこわしが治らない
- めまいやふらつきが頻繁に起きる
- 転倒した際に強い痛みがある(骨折の可能性)
- 尿の量や色に異変がある、むくみが続く
70代では、「このくらい大丈夫」と我慢しがちですが、小さな変化を早めにキャッチすることが、大きなトラブルを防ぐ最善の方法です。
8. まとめ
70代の体は、長い人生で培ってきた経験と同じように、長い年月の使用による変化も蓄積しています。しかし、「年だから仕方ない」と諦める必要はありません。
内耳の有毛細胞は再生しないけれど、音量を控えることで残った機能を守れます。消化器の力が落ちても、食べ方を工夫すれば栄養はしっかり摂れます。肌が乾燥しやすくても、保湿の習慣でバリア機能は保てます。筋力が落ちても、安全な筋トレを続ければ転倒は予防できます。
「守りながら使い続ける」。これが70代の体との上手な付き合い方です。今日からできる小さなケアの積み重ねが、明日の「自分の足で歩ける幸せ」を支えてくれます。
よくある質問
Q1. 70代から補聴器を使い始めるのは遅いですか?
回答: 遅くはありません。むしろ、聞こえにくさを感じたら早めに使い始めることが大切です。聞こえにくい状態が続くと、脳の聴覚処理能力が低下し、認知機能にも影響する可能性が指摘されています。まずは耳鼻科で聴力検査を受け、専門家と相談しましょう。
Q2. 食が細くなってきましたが、栄養は足りていますか?
回答: 食事量が減ると、タンパク質やビタミン、ミネラルの不足が起きやすくなります。一度にたくさん食べられない場合は、1日3食にこだわらず、間食も含めて5〜6回に分けて食べる「分食」が効果的です。卵・豆腐・ヨーグルトなど、少量でも栄養価の高い食品を取り入れましょう。体重が減り続ける場合は、かかりつけ医に相談してください。
Q3. 転倒予防のために家の中でできることはありますか?
回答: 家の中の環境整備が転倒予防の第一歩です。段差にすべり止めテープを貼る、廊下や階段に手すりを設置する、コードやマットなどのつまずきやすいものを片づける、夜間のトイレ動線に足元灯をつけるなどが効果的です。筋トレやバランス訓練と合わせて、住環境の安全対策を行いましょう。
合わせて読みたい




監修:Dr.T 参考文献:
- Newton Press『ニュートン式 超図解 最強に面白い!! 人体 取扱説明書編』



コメント