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目次
- 骨密度検査を受けるべきタイミング
- 骨密度検査の種類と特徴
- 検査結果の見方――YAM値とTスコア
- 骨密度だけでは見えない「骨質」の話
- 血液検査でわかる骨代謝マーカー
- こんな症状があれば受診を
- まとめ
- よくある質問
シリーズ②では、骨粗鬆症になりやすい人の特徴やリスク因子についてお伝えしました。「自分にもリスクがありそうだ」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。
では、骨の状態を調べるにはどうすればよいのでしょうか? 今回は骨密度検査の受け方、結果の見方、そして診断の基準について解説します。
1. 骨密度検査を受けるべきタイミング
骨粗鬆症は自覚症状がほとんどないため、検査を受けなければ見つけることができません。「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2025年版」では、以下のような方に骨密度検査が推奨されています。
【女性の場合】
- 65歳以上の女性は、特にリスク因子がなくても骨密度検査を受けることが推奨されます
- 65歳未満でも、閉経を迎えた方や閉経が近づいている方で、シリーズ②でご紹介したリスク因子(喫煙・飲酒・やせ型・家族歴・運動不足など)がある場合は、検査をおすすめします
【男性の場合】
- 70歳以上の男性は骨密度検査の対象です
- 50歳〜70歳未満の男性でも、リスク因子がある方は検査を受けることが推奨されます。男性は女性に比べて骨粗鬆症の意識が低い傾向がありますが、70代以降の骨折は決して珍しくありません
【年齢・性別を問わず】
- 軽い衝撃で骨折したことがある方(つまずいた程度で折れた、くしゃみで背骨が潰れたなど)
- 骨密度を下げる病気がある方、または骨密度に影響する薬(ステロイド薬など)を長期間使用している方
- 骨粗鬆症の治療を検討する可能性がある方
「自分は関係ない」と思いがちな40〜50代の方も、閉経やリスク因子の有無によっては早めに検査を受けておくことが大切です。
自治体が実施する健康診断に骨密度検査が含まれていることもあります。40歳、45歳、50歳、55歳、60歳、65歳、70歳の節目年齢で受けられる場合が多いので、お住まいの自治体のホームページなどで確認してみてください。
2. 骨密度検査の種類と特徴
骨密度を測る方法はいくつかありますが、代表的なものをご紹介します。
DXA法(デキサ法)が最も正確で信頼性の高い検査法です。微量のX線を2種類使って、腰椎(腰の骨)と大腿骨近位部(太もものつけ根の骨)の骨密度を測定します。検査時間は10〜15分程度で、痛みはありません。骨粗鬆症の診断にはDXA法が標準とされています。
超音波法は、かかとの骨に超音波を当てて骨の状態を推定する方法です。健康診断やイベントなどの簡易検査で使われることが多く、放射線を使わないため気軽に受けられます。ただし、正確な骨密度を測ることはできないため、あくまでスクリーニング(ふるい分け)目的と考えてください。超音波法で「要精密検査」と判定された場合は、DXA法による精密検査を受けましょう。
MD法は、手のX線写真をアルミニウム板と一緒に撮影し、骨の濃さを比較する方法です。手軽ですが、腰椎や大腿骨の骨密度を直接測ることはできません。
整形外科を受診すれば、多くの場合DXA法で検査を受けることができます。
検査を受けるときの準備は特にありません。服装も普段着のままで大丈夫です(金属のベルトやボタンがある場合は外していただくことがあります)。検査台に仰向けになるだけで、数分〜十数分で終わりますので、気軽に受けていただけます。
3. 検査結果の見方――YAM値とTスコア
骨密度検査の結果でよく目にするのが「YAM値」です。
YAM値とは、Young Adult Mean(若年成人平均値)の略で、20〜44歳の健康な方の骨密度を100%としたとき、あなたの骨密度がその何%にあたるかを示す数値です。
診断の目安は以下のとおりです。
- YAM値80%以上:正常
- YAM値70〜80%:骨量減少(骨粗鬆症の一歩手前)
- YAM値70%未満:骨粗鬆症
ただし、YAM値が70%以上であっても、すでに脆弱性骨折(軽い衝撃による骨折)がある場合は骨粗鬆症と診断されます。
国際的には「Tスコア」が用いられることもあります。Tスコアは若年成人の平均値からの標準偏差を示し、−2.5以下で骨粗鬆症と診断されます。日本のYAM値70%未満とほぼ同じ意味合いです。
検査結果を受け取ったら、ぜひ数値を記録しておいてください。骨密度の「今」の値だけでなく、経年変化(前回からどれくらい変わったか)を見ることがとても大切です。同じYAM値75%でも、前回80%から急に下がった場合と、ずっと75%で安定している場合では、意味合いがまったく異なります。

4. 骨密度だけでは見えない「骨質」の話
骨の強さは「骨密度」だけで決まるわけではありません。実は「骨質(こつしつ)」も重要な要素です。
骨の強さを建物に例えると、骨密度は「コンクリートの量」、骨質は「鉄筋の質」にあたります。いくらコンクリートが十分でも、鉄筋がさびていたら建物はもろくなりますよね。
骨質は骨の中のコラーゲン(たんぱく質の一種)の状態に左右されます。糖尿病の方が骨密度が正常でも骨折しやすいのは、高血糖がコラーゲンを劣化させ、骨質を悪くするためと考えられています。
現時点では骨質を直接測定する検査は一般の医療機関では難しいのですが、骨密度検査に加えて次にご紹介する血液検査を組み合わせることで、骨の状態をより正確に把握できます。
5. 血液検査でわかる骨代謝マーカー
骨密度検査と合わせて、骨代謝マーカーの血液検査を行うことがあります。これは骨がどのくらいのペースで壊されて作られているかを数値で見るものです。
代表的なマーカーには以下のものがあります。
骨吸収マーカー(骨が壊されるスピードを見る):TRACP-5b、NTXなど。この値が高いと骨が壊されるペースが速いことを示し、骨密度が低下しやすい状態です。
骨形成マーカー(骨が作られるスピードを見る):BAP、P1NPなど。治療の効果判定に使われることが多いマーカーです。
これらの検査は、治療を始めるかどうかの判断や、治療薬の効果を確認するために役立ちます。骨密度検査が年に1〜2回程度なのに対し、骨代謝マーカーは3〜6ヶ月ごとに測定できるため、治療効果を早めに確認できるメリットがあります。
6. こんな症状があれば受診を
以下のような変化に気づいたら、整形外科を受診して骨密度検査を受けることをおすすめします。
- 身長が縮んできた(2cm以上):気づかないうちに背骨の圧迫骨折が起きている可能性があります。
- 背中が丸くなってきた:複数の椎体が潰れることで、背中が丸くなる(円背)ことがあります。
- 腰や背中に慢性的な痛みがある:圧迫骨折の痛みは鈍い場合もあり、筋肉痛と間違えることがあります。
- ちょっとした転倒で骨折した:通常なら折れないような軽い衝撃で骨折した場合は、骨粗鬆症を疑います。
これらは骨粗鬆症のサインかもしれません。「年のせい」と自己判断せず、早めに相談してください。
特に「身長の縮み」は見過ごされやすいサインです。若い頃の身長と比べて2cm以上縮んでいたら、知らないうちに背骨の圧迫骨折が起きている可能性があります。年に一度は身長を測って記録しておくことをおすすめします。健康診断で測定する機会があれば、以前のデータと比較してみてください。
7. まとめ
骨粗鬆症は検査をしなければ見つけられない病気です。最も信頼性の高い検査はDXA法で、整形外科で受けることができます。YAM値70%未満で骨粗鬆症と診断されますが、骨密度だけでなく骨質や骨代謝マーカーも合わせて評価することが大切です。
次回のシリーズ④では、骨粗鬆症と診断されたあとの治療法や薬の種類について解説します。
よくある質問
Q1. 骨密度検査は保険が使えますか?
回答: 医師が骨粗鬆症を疑って検査を指示する場合は、健康保険が適用されます。自治体の検診で受けられる場合は無料または少額の自己負担で受けられることもあります。一方、自分で希望する人間ドックのオプションとして受ける場合は自費になることもあります。
Q2. 骨密度検査はどのくらいの頻度で受けるべきですか?
回答: 骨粗鬆症と診断されて治療中の方は、半年〜1年に1回の検査が一般的です。骨量減少(YAM値70〜80%)と判定された方も、年に1回程度の経過観察をおすすめします。正常範囲の方でも、閉経後の女性は数年に1度は確認しておくと安心です。
Q3. 超音波法で「正常」と出ましたが安心して大丈夫ですか?
回答: 超音波法はあくまでスクリーニング目的の簡易検査です。かかとの骨で測るため、腰椎や大腿骨の骨密度が正確に反映されていない場合があります。リスク因子がある方は、超音波で正常であっても一度DXA法による精密検査を受けていただくことをおすすめします。
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監修:Dr.T
参考文献:
- 日本骨粗鬆症学会「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2025年版」
- 日本骨代謝学会「骨代謝マーカーの適正使用ガイドライン」
- 厚生労働省「e-ヘルスネット:骨粗鬆症の検査」



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