その腰痛、実は”骨折”かも ― 見逃したくない高齢者の圧迫骨折サイン
腰痛
2026.07.29 2026.04.15
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かんたん版要点だけ・約2分
詳しい版くわしい解説・約6分
60歳以上の方で、突然始まった腰や背中の痛みが強く、寝返りや起き上がりが困難な場合は、まず脊椎圧迫骨折 を疑ってください。主な原因は骨粗しょう症で、軽く尻もちをついただけ、くしゃみをしただけ、孫を抱っこしただけ でも起こります。
ぐっくり腰との決定的な違い
寝返り・起き上がりでズキッと激痛 ――これが最も重要なサインです横になっていてもズンと重い痛み が残る 背中を叩くと響く(叩打痛) 身長が縮むことがある
「いつのまにか骨折」のサイン
圧迫骨折の3分の2は「気づかれずに」起きる と言われています。ここ数年で身長が4cm以上縮んだ 、背中が丸くなってきた(円背)、壁に背中をつけて立つと後頭部が壁につかない 、呼吸が浅い・食後に胃もたれしやすくなった――これらは背骨が少しずつつぶれている可能性のサインです。
放置すると起きる連鎖
一度背骨が1個折れると、次の1年以内に別の椎体が折れるリスクが5倍 に跳ね上がります(二次骨折)。さらに円背が進むと呼吸機能が低下し、歩行バランスが崩れて転倒しやすくなります。痛みそのものより、動かなくなることの影響が大きい のです。
再発を防ぐために
骨粗しょう症治療を継続する ――最低でも3〜5年の継続が推奨されますカルシウムとビタミンD ――牛乳・小魚・小松菜・大豆製品、日光浴15分、鮭やきのこ類タンパク質 ――体重1kgあたり1.0〜1.2g(体重50kgなら50〜60g/日)転ばない環境づくり ――段差・敷物の見直し、手すり、滑り止め付き室内履き、フットライト筋トレとバランス運動 ――椅子からの立ち座り10回×2セット、片脚立ち30秒
こんなときは受診を
「湿布で様子を見ましょう」と自己判断するにはリスクの高い病気です。起き上がれないほど痛い 場合は、すぐに整形外科を受診してください。新しい骨折は初期にレントゲンで写らないこともあり、MRIで骨髄浮腫を確認して診断します。圧迫骨折は「年のせい」ではなく、治療できる病気 です。
監修:Dr.T
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目次
高齢者の「急な腰痛」、まず疑うべきは圧迫骨折
気づかないうちに起きている”いつのまにか骨折”
ぎっくり腰と圧迫骨折の決定的な違い
放っておくとどうなる? 圧迫骨折の恐い連鎖
病院でする検査と治療の流れ
家族・ご本人ができる再発予防
まとめ
よくある質問
シリーズ②でお伝えしたように、腰痛の9割以上は画像検査では原因の分からない「非特異的腰痛」です。しかし残り1割弱には、見逃してはいけない腰痛 が含まれます。その代表が、高齢の方の脊椎圧迫骨折(せきついあっぱくこっせつ) です。
結論から言います。
60歳以上の方で、突然始まった腰や背中の痛みが強く、寝返りや起き上がりが困難な場合、まず圧迫骨折を疑ってください。
「湿布で様子を見ましょう」と自己判断するには、リスクの高い病気です。
今回は、ご本人はもちろん、親御さんが腰を痛がっている というご家族にもぜひ読んでいただきたい内容です。
1. 高齢者の「急な腰痛」、まず疑うべきは圧迫骨折
脊椎圧迫骨折は、背骨(椎体)が押しつぶされるように折れる骨折 です。
若い人ではほとんど起こりませんが、65歳以上・特に女性 では非常に頻度の高い骨折です。
主な原因は骨粗しょう症(骨粗鬆症) 。骨の中身がスカスカになっているため、
軽く尻もちをついただけ
くしゃみをしただけ
布団を持ち上げただけ
孫を抱っこしただけ
といった大した外力でなくても起こります 。これが他の骨折と大きく違うポイントです。
日本では70歳以上の女性の約25%、80歳以上では約40%に、何らかの圧迫骨折の既往があると推計されています。
2. 気づかないうちに起きている”いつのまにか骨折”
実は圧迫骨折の2/3は「気づかれずに」起きる と言われています。
「転んでいないのに気づいたら背中が曲がっていた」「身長が数センチ縮んだ」──これが”いつのまにか骨折”の典型像です。
以下に当てはまる方は、すでに起きている可能性があります。
ここ数年で身長が4cm以上 縮んだ
背中が丸くなってきた(円背)
壁に背中をつけて立つと、後頭部が壁につかない
みぞおちが太ももにつくような気がする
最近、呼吸が浅い・食後に胃もたれしやすくなった
これらは圧迫骨折で背骨が少しずつつぶれ、体のバランスが変化しているサインの可能性があります。
3. ぎっくり腰と圧迫骨折の決定的な違い
「ぎっくり腰かな?」と思っていたら実は圧迫骨折だった、という例は日常的によくあります。見分けるポイントを整理します。
ぎっくり腰(非特異的腰痛) 圧迫骨折
年齢 どの年代でも 主に60歳以上
痛みの性質 動かすと痛い、じっとしていれば楽 寝返り・起き上がりでズキッと激痛
安静時の痛み 軽度 横になっていてもズンと重い
背中を叩くと あまり響かない 叩打痛(こうだつう)あり
回復 数日〜2週間で軽快 動かすと痛みが続き、悪化することも
身長 変わらない 縮むことがある
特に重要なのは「寝返り・起き上がりで激痛」 。これは骨折している骨にズレが生じるためで、非特異的腰痛ではあまり見られない 特徴です。
「起き上がれないほど痛い」場合は、自己判断せず整形外科を受診してください 。
4. 放っておくとどうなる? 圧迫骨折の恐い連鎖
圧迫骨折を放置すると、以下のような連鎖が起こる可能性があります。
① 二次骨折(ドミノ骨折)
一度背骨が1個折れると、次の1年以内に別の椎体が折れるリスクが5倍 に跳ね上がります。これを二次骨折 と呼びます。
② 円背(背中の曲がり)の進行
つぶれた椎体を庇うように姿勢が崩れ、重度の円背 になると、
呼吸機能が低下(肺活量が減る)
胃食道逆流症(GERD)が悪化
見た目の変化で外出機会が減る
歩行バランスが崩れ、転倒しやすくなる
③ 要介護・寝たきりリスクの上昇
圧迫骨折のある高齢者は、5年以内の死亡リスクが約2倍 との報告もあります。腰痛そのものより、動かなくなることの影響 が大きいのです。
だからこそ、早期診断・早期治療が何より重要です。
5. 病院でする検査と治療の流れ
整形外科を受診すると、まず行うのはレントゲン検査 。ただし、新しい骨折は初期にレントゲンで写らないこともあります。その場合はMRI で”骨の中のむくみ(骨髄浮腫)”を確認して診断します。
主な治療
保存療法 (多くの場合これで治ります)
短期の安静+硬めのコルセット装着
鎮痛薬(NSAIDs・アセトアミノフェン等)
早期離床・早期リハビリ (寝たきり予防)
骨粗しょう症の治療開始
ビスホスホネート、デノスマブ、テリパラチド、ロモソズマブなど
骨折を起こした時点で即座に開始 するのが現在の推奨
手術療法 (一部の症例)
椎体形成術(BKP:骨セメントを注入する低侵襲手術)
保存療法で痛みが強く残る場合や、骨折の形が不安定な場合に検討
安静=ずっと寝ている、ではありません。「痛みの範囲内で早く動き始める」 のが現代治療の原則です。
6. 家族・ご本人ができる再発予防
圧迫骨折は一度起きたら終わり、ではなく「次を起こさない」ための治療 が何より大切です。
① 骨粗しょう症治療を継続する
途中でやめる方が非常に多いのですが、最低でも3〜5年は継続 が推奨されます。
② カルシウムとビタミンD
牛乳・小魚・小松菜・大豆製品でカルシウムを
日光浴(1日15分)と鮭・きのこ類でビタミンDを
③ タンパク質をしっかり
高齢者は不足しがち。体重1kgあたり1.0〜1.2g が目安です(体重50kgなら50〜60g/日)。
④ 転ばない環境づくり
家の段差・敷物のズレを見直す
トイレ・浴室に手すり
靴下ではなく滑り止め付き室内履き
暗い廊下にフットライト
⑤ 筋トレとバランス運動
椅子からの立ち座り10回×2セット
片脚立ち30秒(壁に手を添えて)
太極拳やスロースクワット
7. まとめ
60歳以上の急な腰痛は、まず圧迫骨折を疑う
軽い動作でも起こる。寝返り・起き上がりでの激痛が典型
背中が曲がった・身長が縮んだは”いつのまにか骨折”のサイン
放置すると二次骨折・円背・寝たきりの連鎖に
治療は保存療法+骨粗しょう症治療。早期離床 が鍵
再発予防はカルシウム・ビタミンD・タンパク質・転倒予防・筋トレ
圧迫骨折は「年のせい」ではなく、治療できる病気 です。ご家族が腰を痛がっていたら、ぜひ早めに整形外科へ。
よくある質問
Q1. 転んだ覚えがないのに骨折なんてあるのですか?
回答: はい、高齢者の圧迫骨折の約2/3は、本人が転倒を自覚していないケースです。くしゃみ・重い荷物・孫を抱き上げた、などの日常動作で折れる ことが珍しくありません。「転んでいないから骨折ではない」とは言い切れません。
Q2. コルセットはずっとつけないといけませんか?
回答: 一般的には発症から2〜3ヶ月を目安 に装着します。長期に着け続けると筋力が落ちるので、痛みが落ち着いた段階で医師と相談しながら外していきます。同時にリハビリで筋力を戻すのが理想です。
Q3. 骨粗しょう症の薬は一度始めたら一生飲み続けるの?
回答: 薬の種類や骨密度の改善具合によって、3〜5年で見直し・休薬 を検討することがあります。自己判断での中止は再骨折リスクを高めるので、必ず主治医と相談してください。
Q4. 痛みが強い時期、お風呂に入ってもいいですか?
回答: 発症直後で痛みが強い時期は、数日はシャワーのみ が無難です。湯船につかると立ち上がりで激痛が走ることがあります。痛みが落ち着いたら、ぬるめ(38〜40度)の短時間入浴から再開しましょう。
Q5. 家族が「年だから仕方ない」と言って受診したがりません。
回答: 圧迫骨折は早く診断して早く動き始める ほど予後が良くなります。「年のせい」で放置すると寝たきりリスクが上がります。「検査だけでも受けよう」と声をかけ、整形外科に同行してあげるのがベストです。
監修:Dr.T
参考文献:
1. Hartvigsen J, et al. What low back pain is and why we need to pay attention. The Lancet . 2018;391:2356-67.
2. 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版. 日本骨粗鬆症学会.
3. GBD 2021 Low Back Pain Collaborators. The Lancet Rheumatology . 2023;5:e316–e329.
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