70代の「もの忘れ」は防げる?認知機能を守る毎日の習慣

70代の認知機能の維持 アイキャッチ 70代の健康習慣

目次

  1. 加齢によるもの忘れと認知症のちがい
  2. なぜ70代で認知機能が低下しやすいのか
  3. 自宅でできる認知機能キープのセルフケア
  4. ご家族ができるサポート
  5. こんな変化があれば受診を
  6. まとめ

「あれ、何を取りに来たんだっけ?」「人の名前がすぐに出てこない」――こうした経験は、年齢を重ねるとどなたにも起こりうることです。

70代になると、記憶力や判断力の衰えを感じる場面が増えてきます。「もしかして認知症の始まり?」と不安になる方もいるかもしれません。しかし、加齢による自然なもの忘れと認知症は別のものですし、日々の習慣によって認知機能を維持・改善できることがわかっています。

この記事では、70代のご本人もご家族も一緒にできる「脳の健康を守る習慣」をお伝えします。


1. 加齢によるもの忘れと認知症のちがい

まず大切なのは、年相応のもの忘れと認知症を区別することです。

加齢によるもの忘れは、体験の一部を忘れるものです。たとえば「昨日の夕食のおかずが思い出せない」といった状態で、ヒントをもらうと思い出せることが多く、日常生活に大きな支障はありません。

一方、認知症は、体験そのものを忘れてしまいます。「昨日夕食を食べたこと自体を覚えていない」「いつも通っている道で迷う」「同じことを何度も聞く」といった状態で、日常生活に支障が出てきます。

大切なのは、「もの忘れがある=認知症」ではないということ。しかし、もの忘れの頻度や程度が明らかに増えてきた場合は、早めに医療機関で相談することが大切です。


2. なぜ70代で認知機能が低下しやすいのか

脳もからだの一部である以上、加齢の影響を受けます。70代で認知機能が低下しやすい背景には、いくつかの要因があります。

脳の血流の低下: 動脈硬化や高血圧の影響で脳への血流が悪くなると、脳の栄養や酸素が不足し、認知機能に影響を及ぼします。

社会的な交流の減少: 退職や配偶者との死別、友人関係の縮小などにより、人と話す機会が減ると、脳への刺激が少なくなります。「使わない脳は衰える」というのは、科学的にも裏付けられています。

生活習慣病の影響: 糖尿病、高血圧、脂質異常症は、認知症のリスクを高めることが多くの研究で示されています。これらの持病の管理が、脳の健康にも直結します。

睡眠の質の低下: 加齢に伴い睡眠が浅くなりやすく、脳の老廃物を除去する機能が低下します。近年の研究では、睡眠中に脳内のアミロイドβ(認知症の原因物質のひとつ)が排出されることがわかっています。


3. 自宅でできる認知機能キープのセルフケア

運動で脳を活性化

運動は筋肉だけでなく、脳にも非常によい影響を与えます。

ウォーキング: 1日20〜30分の散歩は、脳の血流を増やし、記憶をつかさどる海馬(かいば)の萎縮を防ぐ効果が報告されています。景色を楽しみながら歩くことで、視覚的な刺激も加わります。

デュアルタスク運動: 歩きながら「しりとり」をする、足踏みしながら引き算をするなど、からだと頭を同時に使う運動は、認知機能の維持に特に効果的とされています。

脳を使う習慣

読書・新聞を読む: 文字を読んで内容を理解し、考えるという行為は脳の広い範囲を使います。読んだ内容を誰かに話すと、さらに効果的です。

料理をする: 献立を考え、材料を準備し、手順を組み立て、火加減を調整する。料理は実はとても高度な脳のトレーニングです。できる範囲で続けましょう。

手書きの習慣: 日記をつける、手紙を書く、家計簿をつけるなど、手を動かして書く行為は脳の活性化に有効です。

生活習慣の改善

質のよい睡眠を確保する: 昼寝は30分以内にとどめ、夜はなるべく決まった時間に就寝しましょう。寝る前のスマートフォンやテレビは控え、寝室は暗く静かに保つことが大切です。

持病をしっかり管理する: 高血圧、糖尿病、脂質異常症がある方は、処方された薬をきちんと飲み、定期的に受診しましょう。これらの病気をコントロールすることが、認知症予防にもつながります。

飲酒は適量に: 過度な飲酒は脳に直接的なダメージを与えます。飲む場合は1日ビール中瓶1本程度を目安にし、週に2日は休肝日を設けましょう。


4. ご家族ができるサポート

会話の機会を増やす: 電話やビデオ通話でもよいので、定期的に話す機会を作りましょう。「今日は何をしたの?」「ニュースで気になったことはあった?」など、記憶を引き出す質問が効果的です。

新しい体験を一緒にする: 旅行、美術館、料理教室など、新しい刺激がある体験は脳にとって最高のトレーニングです。大がかりでなくても、いつもと違う道を散歩するだけでも効果があります。

変化に気づいたら記録する: 「同じ話を何度もするようになった」「慣れた作業でミスが増えた」「性格が変わった気がする」など、気になる変化があったら日付とともにメモしておくと、受診時に医師への説明に役立ちます。

頭ごなしに否定しない: もの忘れが増えた方に「さっきも言ったでしょ」「また忘れたの?」と言ってしまうと、本人の自尊心を傷つけ、会話を避けるようになることがあります。穏やかに接し、さりげなくサポートする姿勢を心がけてください。


5. こんな変化があれば受診を

以下のような変化が見られる場合は、軽度認知障害(MCI)や認知症の可能性があります。早めにかかりつけ医や専門の医療機関を受診しましょう。

  • 同じことを何度も聞いたり話したりする
  • 日付や曜日がわからなくなることが増えた
  • よく知っている場所で道に迷った
  • 薬の飲み忘れや飲み間違いが増えた
  • お金の計算や管理が難しくなった
  • 趣味や外出への興味がなくなった

早期に発見できれば、進行を遅らせる治療や生活指導を受けることができます。「おかしいな」と感じたら、ためらわず相談してください。


6. まとめ

70代のもの忘れ、すべてが認知症ではありません。しかし、何もせずに放っておけば、認知機能は少しずつ低下していきます。

大切なのは、からだを動かすこと、脳を使い続けること、人とつながること。この3つの習慣を日常に取り入れることで、脳の健康を長く守ることができます。

ご本人にとってもご家族にとっても、「気づき」と「早めの行動」が最大の武器です。今日からできることを、一緒に始めていきましょう。


よくある質問

Q1. 脳トレアプリやパズルは認知症予防に効果がありますか?

回答: 脳トレやパズルは脳の一部を刺激する効果はありますが、それだけで認知症を予防できるという科学的根拠はまだ十分ではありません。運動、社会的交流、生活習慣の改善と組み合わせることで、より高い効果が期待できます。楽しんで続けられるなら、よい習慣のひとつとして取り入れてください。

Q2. 認知症は遺伝しますか?

回答: 一部の認知症には遺伝的な要因が関わるものがありますが、多くの認知症(特にアルツハイマー型)は生活習慣や環境要因の影響が大きいとされています。遺伝的な素因があっても、運動や食事、社会参加などの生活習慣によってリスクを下げることが可能です。

Q3. もの忘れ外来にはどんなときに行けばよいですか?

回答: 「以前と比べて明らかにもの忘れが増えた」「家族から何度も指摘される」「日常生活で困ることが出てきた」と感じたときが受診のタイミングです。もの忘れ外来では、認知機能の検査を行い、治療や生活指導が必要かどうかを判断してもらえます。ご本人が受診を嫌がる場合は、ご家族が先に相談することも可能です。

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監修:Dr.T

参考文献:

  1. Livingston G, et al. Dementia prevention, intervention, and care: 2020 report of the Lancet Commission. Lancet. 2020;396(10248):413-446.
  2. 日本神経学会「認知症疾患診療ガイドライン2017」
  3. 国立長寿医療研究センター「認知症予防に向けた取り組み」

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