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目次
- 70代の転倒・骨折が怖い理由
- 転びやすくなる原因を知ろう
- 自宅でできる転倒予防のセルフケア
- 住まいの環境を整える
- ご家族ができるサポート
- こんな症状があれば受診を
- まとめ
「ちょっとつまずいただけなのに骨折してしまった」――70代の方やそのご家族から、こうした声をよく聞きます。
70代以上になると、転倒による骨折は決して珍しいことではありません。厚生労働省の調査では、要介護になった原因の第3位が「骨折・転倒」とされています。しかし、転倒は「避けられない事故」ではなく、日々の習慣で大きくリスクを減らせるものです。
この記事では、転倒・骨折を防ぐために今日からできる具体的な習慣を、ご本人にもご家族にもわかりやすくお伝えします。
1. 70代の転倒・骨折が怖い理由
若い頃であれば、転んでも打撲やすり傷で済むことがほとんどです。しかし70代では、転倒が生活を一変させてしまうことがあります。
最も多いのが「大腿骨近位部骨折(だいたいこつきんいぶこっせつ)」、いわゆる太ももの付け根の骨折です。この骨折は手術が必要になることが多く、入院期間は数週間から数ヶ月に及びます。入院中に筋力がさらに低下し、そのまま寝たきりや要介護状態になるケースも少なくありません。
また、背骨が気づかないうちに潰れてしまう「椎体圧迫骨折(ついたいあっぱくこっせつ)」もよく見られます。背中が丸くなったり、身長が縮んだりする原因の多くは、この骨折によるものです。
つまり、70代における転倒は「転んで痛い」では済まない、生活の質を大きく左右する出来事なのです。
2. 転びやすくなる原因を知ろう
転倒には複数の要因が絡み合っています。原因を知ることが、予防の第一歩です。
筋力・バランス能力の低下: 足腰の筋力やバランスを保つ力が衰えると、ちょっとした段差や滑りやすい床でも転びやすくなります。
視力の低下: 白内障や緑内障などにより見えにくくなると、段差や障害物に気づきにくくなります。
薬の影響: 睡眠薬、降圧薬、精神安定剤などの薬は、ふらつきやめまいの原因になることがあります。複数の薬を飲んでいる方は特に注意が必要です。
骨粗しょう症: 骨がもろくなっていると、軽い転倒でも骨折につながります。特に女性は閉経後に骨密度が急激に低下するため、70代ではかなり進行している場合があります。
家の中の環境: 実は転倒の多くは屋外ではなく自宅の中で起きています。カーペットのめくれ、コード類、暗い廊下、浴室の滑りやすい床などが危険箇所です。
3. 自宅でできる転倒予防のセルフケア
バランス運動
片足立ち: テーブルや壁に軽く手をつきながら、片足で立つ練習をしましょう。左右各30秒〜1分を目安に、1日2回行います。慣れてきたら、手を離して挑戦してみてください。
タンデム立ち: 一方の足のかかとに、もう一方の足のつま先をくっつけて一直線に立つ姿勢です。バランス感覚を養う効果的な方法で、10秒キープを目指しましょう。
筋力トレーニング
つま先立ち・かかと立ち: つま先立ちとかかと立ちを交互に繰り返します。ふくらはぎとすねの筋肉を鍛えることで、つまずきにくくなります。
横歩き: 廊下などでカニのように横に歩きます。お尻の横にある中殿筋(ちゅうでんきん)を鍛えることで、歩行時のふらつきを軽減できます。
骨を強くする習慣
日光浴: 1日15〜20分ほど、手や顔に日光を浴びましょう。ビタミンDの生成を促し、カルシウムの吸収を助けます。
カルシウムとビタミンDを意識した食事: 牛乳・ヨーグルト・小魚・豆腐などのカルシウム豊富な食品と、鮭・きのこ類・卵黄などのビタミンD豊富な食品を積極的に取り入れましょう。
4. 住まいの環境を整える
転倒予防で見落とされがちなのが、住環境の改善です。以下のポイントをチェックしてみてください。
手すりの設置: 玄関、廊下、トイレ、浴室、階段に手すりがあると、転倒リスクが大きく下がります。介護保険を利用すれば、自己負担1〜3割で住宅改修ができる場合もあります。
床の整理: コード類、新聞紙、脱いだ靴などの「つまずきの元」を床に置かないようにしましょう。カーペットのめくれも要注意です。
照明の見直し: 廊下やトイレまでの動線に足元灯(センサーライト)を設置すると、夜間の転倒を防げます。
浴室の安全対策: すべり止めマットの使用、シャワーチェアの導入、浴槽の出入りに使う手すりの設置を検討しましょう。
履き物の見直し: 室内ではかかとのあるスリッパよりも、かかとが固定される室内履きが安全です。裸足やストッキングでの歩行も滑りやすいので避けましょう。
5. ご家族ができるサポート
定期的に実家を訪問して住環境を確認: 離れて暮らしている場合は、帰省の際に自宅内の危険箇所をチェックしてあげてください。本人は慣れているため、危険に気づいていないことがよくあります。
薬の確認を一緒に行う: 複数の病院にかかっている場合、似たような薬が重複していることがあります。お薬手帳を一緒に確認し、かかりつけ医や薬剤師に相談してみましょう。
転んだことを責めない: 転倒を経験すると「また転んだら怖い」という気持ちから外出を控えるようになることがあります。すると筋力がさらに低下し、かえって転びやすくなる悪循環に陥ります。転んだことを責めるのではなく、一緒に予防策を考える姿勢が大切です。
6. こんな症状があれば受診を
以下の症状がある場合は、早めに整形外科やかかりつけ医を受診しましょう。
- 最近、半年以内に2回以上転倒した
- 背中が以前より丸くなった、身長が2cm以上縮んだ
- 歩くときにふらつきやすい
- 立ち上がるときにめまいがする
- 骨粗しょう症の検査を受けたことがない
骨密度検査は痛みもなく短時間で終わります。70代の方は一度は骨密度検査を受けておくことをおすすめします。
7. まとめ
70代の転倒・骨折は、生活の質を大きく変えてしまう可能性がある深刻な問題ですが、日々の小さな習慣で予防することができます。
バランス運動で転びにくいからだを作り、カルシウムとビタミンDで骨を強く保ち、住まいの環境を安全に整える。この3つを意識するだけで、転倒のリスクはぐっと下がります。
ご本人もご家族も、「まだ大丈夫」ではなく「今から備える」気持ちで、今日からできることを一つずつ始めていきましょう。
よくある質問
Q1. 骨粗しょう症の薬を飲んでいれば、骨折の心配はありませんか?
回答: 骨粗しょう症の治療薬は骨折リスクを大幅に下げてくれますが、完全に防げるわけではありません。薬の服用と合わせて、運動や栄養管理、住環境の整備も続けることが大切です。
Q2. 転倒予防に効果的な運動はどのくらいの頻度で行えばよいですか?
回答: 理想的には毎日少しずつが効果的です。片足立ちやかかと上げなど、簡単な運動を1日5〜10分で構いません。週に2〜3回でも、まったくしないより大きな効果があります。無理のない範囲で続けることが一番のポイントです。
Q3. 一度転んで骨折した人は、また骨折しやすいのですか?
回答: はい、一度骨折を経験した方は、再び骨折するリスクが高いことがわかっています。これを「二次性骨折」と呼び、近年では予防に力を入れる医療機関が増えています。骨折歴がある方は、骨粗しょう症の治療と転倒予防の両方を積極的に行いましょう。
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監修:Dr.T
参考文献:
- 日本整形外科学会「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版」
- 厚生労働省「国民生活基礎調査(2022年)」
- Kannus P, et al. Prevention of falls and consequent injuries in elderly people. Lancet. 2005;366(9500):1885-93.



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