男性ホルモン「テストステロン」の働きと、男性更年期を乗り越えるセルフケア

予防医療

目次

  1. 男性ホルモン(テストステロン)とは
  2. テストステロンが担う5つの大切な役割
  3. 男性にも更年期がある――LOH症候群とは
  4. こんな症状に心当たりはありませんか?
  5. 自宅でできる男性更年期のセルフケア
  6. こんなときは受診を
  7. まとめ

1. 男性ホルモン(テストステロン)とは

「ホルモン」と聞くと女性特有のものと思われがちですが、男性の体にもホルモンは欠かせません。男性ホルモンの代表格がテストステロンです。主に精巣(睾丸)で作られ、一部は副腎からも分泌されています。

テストステロンの分泌量は20代をピークに、30代以降ゆるやかに低下していきます。その減り方には個人差がありますが、年間1〜2%ずつ減少するといわれており、40代・50代で「なんとなく調子が悪い」と感じる方が増えるのは、このホルモンの変化が一因かもしれません。

2. テストステロンが担う5つの大切な役割

テストステロンは単なる「男らしさのホルモン」ではありません。体と心の広い範囲に影響を与えています。

筋肉と骨の維持:テストステロンは筋肉量や骨密度を保つ働きをしています。分泌が減ると筋力が落ちやすくなり、骨粗鬆症のリスクも高まります。

やる気や集中力の維持:テストステロンは脳の働きにも関わっており、意欲やチャレンジ精神、判断力に影響します。「最近なにもやる気が出ない」と感じたら、ホルモンの変化が背景にあるかもしれません。

メンタルの安定:テストステロンには気分を安定させる作用があります。低下するとイライラしやすくなったり、不安感や落ち込みが強くなることがあります。

内臓脂肪のコントロール:テストステロンは脂肪の代謝にも関与しており、分泌が減ると内臓脂肪がつきやすくなります。メタボリックシンドロームとの関連も指摘されています。

血管や心臓の健康:テストステロンには血管を広げ、動脈硬化を予防する作用があるとされています。長期的な低下は生活習慣病のリスク上昇につながる可能性があります。

3. 男性にも更年期がある――LOH症候群とは

女性の更年期は広く知られていますが、実は男性にも更年期があります。正式には「加齢男性性腺機能低下症候群」(LOH症候群)と呼ばれ、テストステロンの低下によってさまざまな不調が生じる状態です。

女性の場合は閉経前後の比較的短い期間にホルモンが急激に減少しますが、男性の場合はゆっくりと低下していくため、変化に気づきにくいのが特徴です。「歳のせいだろう」と見過ごされるケースが非常に多いのが現状です。

日本泌尿器科学会・日本Men’s Health医学会のガイドラインでは、LOH症候群の有病率は40代以降の男性で約2〜6割に上る可能性が示唆されています。決してめずらしい状態ではありません。

4. こんな症状に心当たりはありませんか?

男性更年期の症状は大きく3つの領域にわたります。

体の症状としては、疲れやすい、筋力の低下、関節や筋肉の痛み、発汗やほてり、体重増加(特にお腹まわり)などが挙げられます。

心の症状としては、気分の落ち込み、イライラ、不安感、集中力の低下、不眠などがあります。うつ病と間違われることもあり、注意が必要です。

性に関する症状としては、性欲の低下や勃起力の減退が代表的です。パートナーとの関係に影響することもあり、本人が口にしづらい悩みのひとつです。

これらの症状がいくつか重なり、2週間以上続いている場合は、ホルモンの低下が関係しているかもしれません。

5. 自宅でできる男性更年期のセルフケア

テストステロンの低下は自然な変化ですが、生活習慣の工夫によってそのスピードを緩やかにすることが期待できます。

筋力トレーニングを取り入れる:スクワットや腕立て伏せなどの筋トレは、テストステロンの分泌を促す効果が研究で示されています。週に2〜3回、無理のない範囲で行うことがポイントです。激しすぎる運動はかえってストレスホルモン(コルチゾール)を増やすため、ほどほどが大切です。

質のよい睡眠を確保する:テストステロンは睡眠中に多く分泌されます。睡眠時間が5時間を切ると、テストステロンが10〜15%低下するという報告もあります。就寝前のスマートフォンを控え、寝室を暗く涼しく保つことが効果的です。

ストレスを上手にコントロールする:慢性的なストレスはコルチゾールの分泌を増加させ、テストステロンを抑制します。自分なりのリラックス法(散歩、趣味の時間、深呼吸など)を日常に取り入れましょう。

バランスのよい食事を心がける:亜鉛を含む食品(牡蠣、赤身肉、ナッツ類)、ビタミンDを含む食品(鮭、きのこ類、卵黄)はテストステロンの産生をサポートするとされています。加工食品や過度のアルコール摂取は控えめにしましょう。

社会的なつながりを維持する:意外に感じるかもしれませんが、人との交流や新しいチャレンジは、テストステロンの維持に良い影響を与えるとされています。仕事でも趣味でも、社会参加を意識することが大切です。

6. こんなときは受診を

次のような状態に当てはまる場合は、泌尿器科やメンズヘルス外来を受診することをおすすめします。

倦怠感や気分の落ち込みが2週間以上続く場合、日常生活に支障をきたすほど症状がつらい場合、セルフケアを続けても改善が見られない場合は、専門医に相談してみてください。

医療機関では血液検査でテストステロン値を測定できます。必要に応じてホルモン補充療法(TRT)や漢方薬の処方が検討されることもあります。恥ずかしいことではありませんので、気軽に相談してみましょう。

7. まとめ

男性ホルモン・テストステロンは、筋肉、骨、メンタル、内臓脂肪、血管など体全体の健康に深く関わっています。30代以降ゆるやかに減少し、40代・50代で「男性更年期(LOH症候群)」として症状が現れることは決してめずらしくありません。

大切なのは、「歳のせい」とあきらめないこと。適度な運動、質のよい睡眠、バランスの取れた食事、ストレス管理、そして社会的なつながりの維持というセルフケアの5本柱を意識するだけでも、体調は変わってきます。

気になる症状が長引くときは、遠慮なく専門医を頼ってくださいね。


よくある質問

Q1. 男性の更年期は何歳くらいから始まりますか?

回答:テストステロンは30代後半から徐々に低下し始めますが、症状が出やすいのは40代後半〜60代です。ただし、ストレスや生活習慣によっては30代で症状が現れる方もいます。個人差が大きいので、年齢だけで判断せず、気になる症状があれば早めに相談することが大切です。

Q2. テストステロンを増やすサプリメントは効果がありますか?

回答:市販のサプリメントの中には亜鉛やビタミンDなどが含まれるものがありますが、科学的に明確な効果が証明されているものは限られています。まずは食事や運動などの生活習慣の改善を優先し、それでも改善しない場合は医師に相談するのが安全です。

Q3. 男性更年期とうつ病はどう見分けるのですか?

回答:症状が非常に似ているため、自己判断は難しいのが現実です。泌尿器科で血液中のテストステロン値を測定すれば、ホルモン低下が原因かどうかの手がかりが得られます。両方が同時に起こることもあるため、心療内科と泌尿器科の両面から診てもらうことが理想的です。

Q4. 女性にもテストステロンはありますか?

回答:はい、女性の体でも副腎や卵巣から少量のテストステロンが分泌されています。筋力や骨密度の維持、気力の維持に関わっているとされています。男性の約10〜20分の1程度の量ですが、女性にとっても大切なホルモンです。


監修:Dr.T

参考文献:

  1. 日本泌尿器科学会・日本Men’s Health医学会「LOH症候群診療ガイドライン」
  2. Travison TG, et al. J Clin Endocrinol Metab. 2007;92(1):196-202.
  3. Leproult R, Van Cauter E. JAMA. 2011;305(21):2173-2174.
タイトルとURLをコピーしました