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目次
1. 「おかしいな」に気づいたあなたへ
2. まず大切なこと ― 否定しない・責めない
3. 受診にうまく導く5つのステップ
4. 頼れる相談先を知っておこう
5. 利用できる公的制度と支援
6. 介護する家族自身のケアも忘れずに
7. まとめ ― ひとりで抱え込まないで
「おかしいな」に気づいたあなたへ
「最近、お母さんの様子がちょっと変だな……」。同じ話を何度もする、料理の味つけが変わった、約束を忘れることが増えた。こうした変化に最初に気づくのは、たいてい身近なご家族です。
気づいたとき、多くの方が感じるのは「不安」と「戸惑い」でしょう。「本当に認知症なのか」「どうすればいいのか」「誰に相談すればいいのか」。この記事では、その不安を少しでも和らげるために、具体的な対応の手順をお伝えします。
まず大切なこと ― 否定しない・責めない
ご本人に変化を感じたとき、つい「なんで忘れるの?」「さっき言ったでしょ」と言いたくなるかもしれません。でも、ここが最も大切なポイントです。
認知症の初期には、ご本人も「何かおかしい」と薄々感じていることが多いのです。自分の変化に対する不安や恐怖を抱えながら、毎日を過ごしています。そこに否定や叱責が加わると、自信を失い、ふさぎ込んだり、症状を隠そうとしたりして、結果的に発見が遅れてしまいます。
心がけたい対応は、ゆっくり穏やかに話すこと。短い文でわかりやすく伝えること。間違いを正すのではなく、さりげなくサポートすること。できていることを認めて声をかけること。こうした接し方が、ご本人の心の安定につながり、その後の受診や治療にもスムーズにつながります。
受診にうまく導く5つのステップ
「認知症かも」と感じても、ご本人が素直に受診に応じてくれるとは限りません。「自分はどこも悪くない」と言ったり、怒ったりすることもあります。無理に連れて行こうとすると関係が悪化してしまうので、段階的に進めましょう。
ステップ1:かかりつけ医に先に相談する ― ご本人を連れて行く前に、まずご家族だけでかかりつけ医に相談しましょう。日頃の様子を伝えておくと、次の定期受診時にさりげなく認知機能を確認してもらえることがあります。
ステップ2:健康診断を名目にする ― 「年に一度の健康診断を受けよう」「血圧が気になるから一緒に病院へ行こう」など、認知症以外の理由で受診を促すと、抵抗感が減ります。
ステップ3:信頼できる第三者の力を借りる ― ご本人が信頼している人(兄弟姉妹、友人、近所の方)から「私も最近もの忘れが気になって検査を受けたよ」と伝えてもらうのも効果的です。
ステップ4:地域包括支援センターに相談する ― 自治体の地域包括支援センターには、認知症の相談に慣れた専門スタッフがいます。「どう受診を勧めたらいいか」具体的なアドバイスをもらえます。
ステップ5:焦らず待つことも大切 ― 最初は拒否されても、時間を置いて再度穏やかに提案してみましょう。何よりも大切なのは、ご本人との信頼関係を壊さないことです。
頼れる相談先を知っておこう

認知症に関する相談先は、思っている以上にたくさんあります。主な窓口を紹介します。
地域包括支援センター ― 各市区町村に設置されている高齢者の総合相談窓口です。認知症に関する相談、介護保険の申請手続き、地域の医療機関の情報提供など、幅広いサポートを受けられます。
認知症疾患医療センター ― 各都道府県に設置された専門医療機関です。診断が難しいケースや、行動・心理症状(BPSD)が強い場合に、専門的な診療を受けられます。
認知症カフェ(オレンジカフェ) ― 認知症の方やそのご家族が気軽に集まれる場所です。同じ経験を持つ方と情報交換したり、専門職に相談したりできます。
認知症の人と家族の会 ― 全国組織の当事者団体です。電話相談や地域の集まりがあり、介護の悩みを共有できます。
利用できる公的制度と支援
認知症と診断された場合に利用できる主な制度を紹介します。
介護保険サービス ― 65歳以上の方(または40〜64歳で特定の疾患がある方)は、要介護認定を受けることで、デイサービスやヘルパー派遣、ショートステイなどの介護サービスを利用できます。申請は市区町村の窓口か地域包括支援センターで行えます。
自立支援医療 ― 精神科の通院医療費について、自己負担を1割に軽減できる制度です。認知症の治療で精神科を受診している場合に利用できます。
成年後見制度 ― 判断能力が低下した方の財産管理や契約行為を、家庭裁判所が選任した後見人が代わりに行う制度です。まだ判断能力がある段階で「任意後見契約」を結んでおくこともできます。
日常生活自立支援事業 ― 社会福祉協議会が行うサービスで、金銭管理や書類の保管などを支援してもらえます。成年後見制度よりも手続きが簡単で、軽度の認知症の方に適しています。
介護する家族自身のケアも忘れずに

認知症の介護で最も見落とされがちなのが、介護をする側の健康です。「自分のことは後回し」にしていませんか?
介護者がストレスをためすぎると、うつ症状や体調不良に陥ることがあります。これを「介護疲れ」「介護うつ」と呼びます。
介護者自身が心がけたいこととして、まず完璧を目指さないこと。次に、介護保険サービスを積極的に利用して「プロに任せる時間」を作ること。自分の趣味や楽しみの時間を手放さないこと。定期的に自分の健康診断も受けること。そして、同じ立場の人と話す機会(家族会やオレンジカフェ)を持つことです。
「助けを求めることは、弱さではなく、賢さ」です。
まとめ ― ひとりで抱え込まないで
家族の認知症に向き合うことは、心身ともに大きな挑戦です。でも、あなた一人で背負う必要はありません。
この記事のポイントです。ご本人を否定せず、穏やかに寄り添うことが出発点です。受診は焦らず段階的に。地域包括支援センターは強い味方です。介護保険や成年後見制度などの公的支援を活用しましょう。そして介護者自身の健康を大切にしてください。
次の記事では、「認知症と運動」をテーマに、脳を守るための体の動かし方を具体的にお伝えします。
よくある質問
Q1. 認知症の親が運転免許を返納してくれません。どうすればいいですか?
回答: 運転免許の問題は多くのご家族が悩むポイントです。75歳以上は免許更新時に認知機能検査が義務づけられていますが、それ以前でも心配な場合は、かかりつけ医や地域包括支援センターに相談してみてください。直接「危ないからやめて」と言うと反発されやすいので、主治医から助言してもらったり、「代わりの移動手段(タクシー券や送迎サービス)」を一緒に調べたりするアプローチが効果的です。
Q2. 認知症の診断を受けたら、すぐに施設に入るべきですか?
回答: 認知症と診断されても、初期の段階では在宅での生活を続けられる方がほとんどです。介護保険サービス(デイサービス、ヘルパーなど)を活用しながら、できるだけ住み慣れた環境で暮らすことが、ご本人の生活の質を保つうえでも大切です。施設入所を検討するのは、在宅介護が困難になった段階でも遅くありません。
Q3. 遠方に住む親が心配です。何かできることはありますか?
回答: 離れて暮らしていても、定期的な電話やビデオ通話で様子を確認できます。親の住む地域の地域包括支援センターに連絡し、見守りサービスについて相談するのもおすすめです。また、配食サービスや緊急通報装置など、自治体独自のサービスを調べてみましょう。帰省時にはかかりつけ医に同行し、日頃気になることを伝えておくとよいでしょう。
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監修:Dr.T
参考文献:
1. 厚生労働省「認知症施策推進大綱」
2. 日本認知症ケア学会「認知症ケア標準テキスト」
3. 認知症の人と家族の会 公式ガイドライン



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