70代の「食べる力」を守る!栄養不足を防ぐ食事の工夫

70代の栄養と食事の工夫 アイキャッチ 70代の健康習慣

目次

  1. 70代に忍び寄る「低栄養」の危険
  2. なぜ高齢になると栄養が偏りやすいのか
  3. 自宅でできる食事のセルフケア
  4. ご家族ができるサポート
  5. こんなサインがあれば受診を
  6. まとめ

「最近、食欲がなくて」「お肉はもう重たいから」――70代になると、こうした食の変化を感じる方が増えてきます。

高齢になると「食べすぎ」よりも「食べなさすぎ」のほうが深刻な問題になることをご存じでしょうか。70代以降に注意すべきは、メタボリックシンドロームよりも「低栄養」です。低栄養は筋力低下、免疫力の低下、骨折、認知機能の低下など、さまざまな健康問題の引き金となります。

この記事では、70代のご本人もご家族も実践しやすい「食べる力を守る工夫」をお伝えします。


1. 70代に忍び寄る「低栄養」の危険

低栄養とは、からだに必要なエネルギーや栄養素が十分に摂れていない状態のことです。見た目では元気に見えても、実は低栄養に陥っている70代の方は少なくありません。

厚生労働省の「国民健康・栄養調査」によれば、65歳以上の高齢者のうち約16〜17%が低栄養のリスクがあるとされています。低栄養が続くと、以下のような問題が起きやすくなります。

筋肉量の減少(サルコペニア): たんぱく質が不足すると筋肉が分解され、転倒や骨折のリスクが高まります。

免疫力の低下: 栄養不足は免疫機能を弱め、風邪や肺炎にかかりやすくなります。

傷の治りが遅くなる: 手術後や骨折後の回復が遅れ、入院期間が長引く原因にもなります。

気力や認知機能の低下: 栄養が足りないと、やる気が出なくなったり、ぼんやりすることが増えたりします。


2. なぜ高齢になると栄養が偏りやすいのか

70代で食事が偏りやすくなる原因は、ひとつではありません。複数の要因が少しずつ重なって起こります。

味覚・嗅覚の変化: 加齢とともに味を感じにくくなり、食事の楽しみが減ることがあります。「何を食べても同じ味に感じる」という声もよく聞かれます。

歯や口の問題: むし歯や歯周病、入れ歯の不具合によって、噛む力が弱くなると、柔らかいものばかり選ぶようになります。肉や硬い野菜を避けるうちに、たんぱく質やビタミンが不足しがちになります。

調理の負担: 一人暮らしや高齢者のみの世帯では、「自分のためだけに作るのが面倒」と感じて簡単な食事で済ませたり、食事を抜いてしまうことがあります。

持病の影響や薬の副作用: 糖尿病や腎臓病の食事制限が過剰になっている場合や、薬の副作用で食欲が低下している場合もあります。


3. 自宅でできる食事のセルフケア

たんぱく質を「毎食」意識する

70代では、体重1kgあたり1.0〜1.2gのたんぱく質が推奨されています。大切なのは、1日分をまとめて摂るのではなく、朝・昼・夕の3食に分けて摂ることです。筋肉の合成は食事のたびに起こるため、毎食にたんぱく質を含む食品を入れましょう。

朝食の例: 卵1個+牛乳1杯+トースト → たんぱく質 約15g

昼食の例: 豆腐の味噌汁+焼き鮭+ごはん → たんぱく質 約20g

夕食の例: 鶏むね肉の煮物+小鉢+ごはん → たんぱく質 約25g

「ちょい足し」で栄養アップ

手の込んだ料理を作らなくても、いつもの食事に少し足すだけで栄養価を上げることができます。

味噌汁に卵を落とす: たんぱく質が約6g追加されます。

ごはんにしらすをかける: カルシウムとたんぱく質が補えます。

ヨーグルトにきなこを混ぜる: 植物性たんぱく質と食物繊維が摂れます。

パンにチーズをのせる: カルシウムとたんぱく質の補給に効果的です。

水分も意識的に

高齢になると喉の渇きを感じにくくなり、気づかないうちに脱水になることがあります。特に夏場や暖房の効いた室内では注意が必要です。

1日の水分摂取の目安は約1.5リットル(食事に含まれる水分を除く)。お茶、白湯、スープなど、飲みやすいもので構いません。「喉が渇く前に飲む」を習慣にしましょう。

食事を楽しむ工夫

彩りを意識する: 赤・黄・緑・白・黒の5色を意識すると、自然と栄養バランスが整います。見た目にも食欲がわきやすくなります。

誰かと一緒に食べる: 一人で食べるよりも、誰かと食べるほうが食事量が増えることがわかっています。家族との食事はもちろん、地域の食事会やサロンに参加するのもよい機会です。


4. ご家族ができるサポート

食事の内容を観察する: 訪問時に冷蔵庫をそっと確認してみてください。同じ食材ばかり入っていたり、賞味期限切れの食品が増えていたら、食事がおろそかになっているサインかもしれません。

体重の変化に注目する: 半年で体重が3kg以上減っている場合は、低栄養の可能性があります。定期的に体重を測る習慣を一緒につくりましょう。

調理しやすい環境を整える: 電子レンジで温めるだけの惣菜や冷凍食品を常備しておく、宅配食サービスを利用するなど、無理なく栄養がとれる仕組みを一緒に考えてあげてください。

食事制限が適切か確認する: 「糖尿病だから甘いものは一切ダメ」「血圧が高いから薄味にしなきゃ」と自己判断で厳しい制限をかけている場合があります。主治医に「この年齢でどこまで制限が必要か」を確認することが大切です。70代以降は、制限しすぎることのリスクも考慮すべきです。


5. こんなサインがあれば受診を

以下のようなサインがある場合は、低栄養が進行している可能性があります。かかりつけ医や管理栄養士への相談を検討しましょう。

  • 半年で体重が2〜3kg以上減った(意図していないのに)
  • 食事量が以前の半分以下になった
  • 疲れやすくなった、動くのがおっくうになった
  • 風邪をひきやすくなった、治りにくくなった
  • 肌が乾燥しやすくなった、爪がもろくなった
  • BMIが20未満になった

医療機関では、血液検査(アルブミン値など)で栄養状態を客観的に評価してもらえます。管理栄養士による食事指導を受けることで、改善の道筋が見えてくることも多いです。


6. まとめ

70代の健康を支える土台は「食べること」です。若いころは「食べすぎ注意」だったかもしれませんが、70代からは「しっかり食べる」ことが健康長寿への鍵になります。

毎食たんぱく質を意識する、いつもの食事にちょい足しする、水分を忘れずにとる。難しいことではなく、今日からすぐにできる工夫ばかりです。

ご本人もご家族も、「ちゃんと食べているかな」という視点を持つことが、元気な70代を過ごすための第一歩です。


よくある質問

Q1. 70代でもダイエットは必要ですか?

回答: 70代以降は、極端なダイエットはかえって危険です。体重を減らすことよりも、筋肉を維持しながら適切な栄養を摂ることが大切です。BMIが25を大きく超えている場合は、医師に相談のうえ、無理のない範囲で食事を調整しましょう。自己判断での食事制限は避けてください。

Q2. サプリメントで栄養を補ったほうがよいですか?

回答: 基本は食事から栄養を摂ることが理想ですが、食事量がどうしても増やせない場合は、栄養補助食品やサプリメントの活用も選択肢になります。特にビタミンDやたんぱく質が不足しやすいため、かかりつけ医や管理栄養士に相談してから使い始めると安心です。

Q3. 一人暮らしで料理をする気力がないときはどうすればよいですか?

回答: 無理に自炊しなくても大丈夫です。スーパーの惣菜や冷凍食品、レトルト食品でも、たんぱく質を含むものを選べば栄養は摂れます。宅配弁当サービスを利用するのもよい方法です。「食べないこと」が最も避けたいことなので、どんな形であれ、まずは食べることを優先してください。

合わせて読みたい

70代からでも遅くない!筋力低下・サルコペニアを防ぐ毎日の習慣
70代の筋力低下「サルコペニア」を防ぐ運動と栄養の習慣を医師監修で解説。椅子スクワットやたんぱく質の摂り方など、ご本人もご家族も今日から始められる具体的なセルフケアをわかりやすく紹介します。
70代の「もの忘れ」は防げる?認知機能を守る毎日の習慣
70代のもの忘れと認知症の違い、脳の健康を守る運動・食事・社会参加の習慣を医師監修で解説。ご本人もご家族も実践できる認知機能維持のセルフケアと受診の目安をわかりやすくお伝えします。
BCAAやホエイプロテインって何?──タンパク質の「質」が大切な理由
BCAAやホエイプロテインとは何か、なぜタンパク質の「質」が大切なのかを整形外科医がやさしく解説。必須アミノ酸のバランスが健康維持のカギです。
80代の食事術:少食でも栄養を逃さない5つのコツ
80代の少食でも栄養不足を防ぐ5つのコツを整形外科医が解説。栄養密度の高い食材選び、補食の活用、1日の食事例まで具体的にご紹介します。

監修:Dr.T

参考文献:

  1. 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
  2. 厚生労働省「国民健康・栄養調査(2019年)」
  3. 日本老年医学会「高齢者の栄養管理に関するステートメント」

コメント

タイトルとURLをコピーしました