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「最近、足腰が弱くなってきた気がする」「転ぶのが怖くて運動を控えている」——そんなお悩みを持つ方やご家族は多いのではないでしょうか。
実は、椅子に座ったままでも十分に筋力を維持できる運動があります。立ち上がる必要がないので転倒のリスクが低く、テレビを見ながらでも気軽に取り組めます。
この記事では、整形外科医の視点から、高齢者の方が安全に続けられる「座ったまま運動」を10種類ご紹介します。ご本人はもちろん、ご家族が一緒にサポートしながら取り組んでいただける内容です。
なぜ「座ったまま運動」が大切なのか
加齢とともに筋力は自然に低下します。特に下半身の筋力は、40代から年に約1%ずつ減少するといわれています。筋力が落ちると、つまずきやすくなったり、立ち上がりが辛くなったりします。
しかし、高齢になってから急に激しい運動を始めるのは、ケガのリスクが高く現実的ではありません。そこで注目されているのが「座ったままできる運動」です。
座位での運動のメリットは以下の通りです。
- 転倒リスクがほぼゼロ
- 膝や腰への負担が少ない
- いつでもどこでもできる
- テレビを見ながらでもOK
- 体力に自信がない方でも安心
厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」でも、高齢者には「じっとしている時間を減らし、今より少しでも多く体を動かすこと」が推奨されています。
始める前に知っておきたい3つのポイント
① 安定した椅子を使う
キャスター付きの椅子や折りたたみ椅子は避けましょう。背もたれと肘掛けがある、安定した椅子が理想的です。足の裏が床にしっかりつく高さのものを選んでください。
② 無理をしない
痛みを感じたらすぐに中止してください。「ちょっときついかな」と感じる程度が適切な強度です。回数よりも正しいフォームで丁寧に行うことを大切にしましょう。
③ 呼吸を止めない
運動中に息を止めると血圧が急上昇するおそれがあります。動作に合わせてゆっくり呼吸することを意識してください。
座りながらできる運動10選
それぞれの運動を、イラストとともにご紹介します。すべて1セット10回、1日2〜3セットを目安に行いましょう。
① 足踏み運動(もも上げ)

鍛えられる部位: 太ももの前側(大腿四頭筋)、腸腰筋
やり方:
- 椅子に浅く腰かけ、背筋を伸ばします
- 左右交互に太ももを持ち上げます
- 膝が腰の高さまで上がるのが理想ですが、無理のない範囲でOK
- リズムよく左右10回ずつ行います
ポイント: 背中が丸くならないよう注意。上体をまっすぐ保ちましょう。
② かかと上げ(カーフレイズ)

鍛えられる部位: ふくらはぎ(腓腹筋・ヒラメ筋)
やり方:
- 椅子に座り、足を肩幅に開きます
- つま先を床につけたまま、かかとをゆっくり持ち上げます
- 3秒キープしてからゆっくり下ろします
- 10回繰り返します
ポイント: ふくらはぎは「第二の心臓」と呼ばれ、血液の循環を助けます。むくみの予防にも効果的です。
③ つま先上げ

鍛えられる部位: すねの前側(前脛骨筋)
やり方:
- 椅子に座り、かかとを床につけます
- つま先をゆっくり天井に向けて持ち上げます
- 3秒キープしてからゆっくり下ろします
- 10回繰り返します
ポイント: つまずき予防に直結する大切な運動です。かかと上げとセットで行うと効果的です。
④ 膝伸ばし運動

鍛えられる部位: 太ももの前側(大腿四頭筋)
やり方:
- 椅子に深く腰かけ、背もたれに軽くもたれます
- 片足をゆっくり前に伸ばし、膝をまっすぐにします
- つま先を自分のほうに引き、3秒キープ
- ゆっくり下ろして反対の足も同様に
- 左右10回ずつ行います
ポイント: 膝を支える最も重要な筋肉を鍛えます。膝痛の予防にとても効果的です。
⑤ 足首回し

鍛えられる部位: 足首周りの筋肉、足関節の柔軟性
やり方:
- 片足を少し浮かせます
- 足首をゆっくり大きく円を描くように回します
- 右回り10回、左回り10回
- 反対の足も同様に行います
ポイント: 足首が硬くなると転倒しやすくなります。血行促進にもつながる運動です。
⑥ 太ももの内側しめ

鍛えられる部位: 太ももの内側(内転筋群)
やり方:
- 椅子に座り、膝の間にタオルやクッションを挟みます
- 両膝でタオルをギューッと挟み込みます
- 5秒キープしてからゆっくり力を抜きます
- 10回繰り返します
ポイント: 内転筋は歩行時の安定性に関わる重要な筋肉です。道具がなければ両膝をくっつけるだけでもOKです。
⑦ 肩回し

鍛えられる部位: 肩周りの筋肉(僧帽筋・三角筋)
やり方:
- 両手を肩の上に軽く置きます
- 肘で大きな円を描くように、前から後ろに10回回します
- 次に、後ろから前に10回回します
ポイント: 肩こりの解消や四十肩・五十肩の予防に役立ちます。ゆっくり大きく回すのがコツです。
⑧ グー・パー運動(手指体操)

鍛えられる部位: 手指の筋肉、握力
やり方:
- 両手を前に伸ばします
- 手をギュッとグーに握ります
- 次にパッと大きく開きます
- グー・パーを交互に10回繰り返します
ポイント: 握力の維持は日常生活の自立度に直結します。脳の活性化にも効果があるといわれています。
⑨ 体幹ひねり

鍛えられる部位: 体幹(腹斜筋)、背中の柔軟性
やり方:
- 椅子に座り、両手を胸の前で組みます
- 上半身をゆっくり右にひねり、3秒キープ
- 正面に戻してから、左にひねり3秒キープ
- 左右10回ずつ行います
ポイント: 振り返り動作がしやすくなり、日常動作の改善につながります。腰に痛みがある場合は無理のない範囲で行ってください。
⑩ 深呼吸ストレッチ

鍛えられる部位: 呼吸筋(横隔膜・肋間筋)、胸郭の柔軟性
やり方:
- 椅子に座り、両手を膝の上に置きます
- 鼻からゆっくり4秒かけて息を吸い、両手を天井に向かって伸ばします
- 口からゆっくり8秒かけて息を吐きながら、両手を下ろします
- 5〜10回繰り返します
ポイント: 運動の仕上げに最適です。自律神経を整え、リラックス効果があります。
運動を続けるコツ
- 毎日同じ時間に行う習慣をつける(例:朝食後、テレビの前で)
- 最初は3〜5種目から始め、慣れたら種目を増やす
- 家族と一緒に行うと楽しく続けやすい
- カレンダーに「やった日」を記録するとモチベーションが上がる
こんな症状があるときは無理しないで
以下のような症状がある場合は運動を中止し、かかりつけ医に相談してください。
- 胸の痛みや動悸がある
- めまいやふらつきがする
- 関節に強い痛みや腫れがある
- 発熱している
- 血圧が極端に高い(上が180以上)
まとめ
座ったままできる運動は、転倒リスクが低く、体力に自信がない方でも安心して取り組めます。大切なのは「毎日少しずつ続けること」です。
10種類すべてを一度にやる必要はありません。まずはご自身が「これならできそう」と感じるものから2〜3種目選んで始めてみてください。小さな積み重ねが、1年後、5年後の大きな違いを生みます。
よくある質問
Q1. 1日何分くらい運動すればいいですか?
回答: 1回あたり10〜15分、1日2〜3回が理想的です。ただし、最初は5分からでも構いません。無理なく続けられるペースで始めましょう。
Q2. 車椅子に座ったままでもできますか?
回答: はい、多くの運動は車椅子でも行えます。ただし、車椅子のブレーキを必ずかけた状態で行ってください。足踏み運動などは足を浮かせる範囲で調整しましょう。
Q3. 膝が痛くても大丈夫ですか?
回答: 軽度の膝の痛みであれば、④の膝伸ばし運動は逆に痛みの改善に効果的です。ただし、強い痛みがある場合は無理せず、整形外科を受診してください。
Q4. どのくらい続けたら効果を感じますか?
回答: 個人差はありますが、毎日続けた場合、2〜4週間ほどで「立ち上がりが楽になった」「歩きやすくなった」と感じる方が多いです。
監修:Dr.T(整形外科専門医)
参考文献:
- 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」
- 日本整形外科学会「ロコモティブシンドローム予防啓発公式サイト」
- 日本理学療法士協会「高齢者の運動療法ガイドライン」



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