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前回の記事では、顎変形症の症状や原因についてお伝えしました。「もしかして自分も当てはまるかも」と感じた方もいるのではないでしょうか。
でも、すぐに手術という話になるわけではありません。まずは今の状態を正しく知ること、そして受診するまでの間にできるケアがあります。
この記事では、顎変形症を疑ったときに最初にやるべきことを、順を追って解説します。
1. まず確認したい「セルフチェックリスト」
以下の項目に心あたりがないか、チェックしてみてください。
噛み合わせ編では、前歯で麺類やサンドイッチを噛み切れない、奥歯を噛み締めたとき上下の歯がしっかり合わない、食事のあとにあごが疲れる、片側だけで噛む癖がある、といった点を確認しましょう。
見た目・機能編では、横顔を見たときにあごが出ている、または引っ込みすぎている、口を閉じるときに唇に力が入る(梅干し状のしわができる)、笑ったときに歯ぐきが大きく見える(ガミースマイル)、顔の左右で輪郭が違う、といった変化をチェックしてみてください。
不調編として、あごを動かすとカクカク・ジャリジャリ音がする、朝起きたときにあごや頬の筋肉がこわばっている、サ行・タ行がうまく発音できない、なども該当します。
3つ以上当てはまる場合は、一度専門医に相談してみる価値があります。1〜2つでも気になる症状が強ければ、受診を検討してください。
2. 受診前に自宅でできるセルフケア
顎変形症そのものを自宅で治すことはできませんが、あごまわりの不調を和らげ、悪化を防ぐためのセルフケアは有効です。
あごの安静を意識する
硬いもの(するめ、フランスパン、硬いグミなど)を避け、あごに過度な負担をかけない食事を心がけましょう。大きく口を開ける動作(あくびやカラオケ)も控えめにすると、あごの関節や筋肉の負担が軽くなります。
TCH(歯列接触癖)に気づく
日中、無意識に上下の歯を噛み締めていませんか?本来、リラックスしているとき上下の歯は2〜3mm離れているのが自然な状態です。デスクワーク中やスマホを見ているときに「あ、噛み締めてた」と気づいたら、そっと口を開けて力を抜きましょう。パソコンのモニターや冷蔵庫に「歯を離す」と書いた付箋を貼るのもおすすめです。
あごまわりの筋肉をほぐすストレッチ
咬筋(こうきん)のセルフマッサージは簡単に行えます。耳の前からあごのエラにかけて、人差し指と中指の腹で円を描くようにやさしくほぐしましょう。1回30秒ほどを朝晩2回行うだけでも、こわばりが和らぎます。力を入れすぎないことがポイントです。
寝る姿勢を見直す
うつ伏せ寝や横向き寝は、あごに偏った圧力がかかります。できる範囲で仰向け寝を意識すると、あごへの負担が軽減されます。枕の高さもあごの位置に影響するため、首が自然なカーブを保てる高さに調整してみてください。
頬杖をやめる
長時間の頬杖は、あごを横方向に押し続ける力が加わります。とくに成長期のお子さんでは影響が大きいため、家族で意識して声をかけ合うとよいでしょう。
3. どこに相談すればいい?受診先の選び方
顎変形症が疑われるとき、どの医療機関を受診すればよいか迷う方は多いです。
まずはかかりつけの歯科医院に相談するのが一歩目として手軽です。噛み合わせの状態を診てもらい、必要に応じて専門の医療機関を紹介してもらえます。
矯正歯科は、噛み合わせの精密な検査や矯正治療の計画を立てる専門科です。顎変形症の疑いがあれば、外科との連携も含めて相談できます。選ぶ際は「顎口腔機能診断施設」の指定を受けている医療機関を選ぶと、保険適用での治療がスムーズです。
口腔外科(こうくうげか)は、あごの骨に関わる手術を行う診療科です。大学病院や総合病院に設置されていることが多く、矯正歯科と連携して治療計画を立てます。
受診先を選ぶときのポイントとして、「顎口腔機能診断施設」の指定を受けているか(保険適用の条件)、矯正歯科と口腔外科の連携体制があるか、手術実績の情報が公開されているか、を確認するとよいでしょう。
4. 初診で何をするの?診察の流れ
初めて専門の医療機関を受診したとき、いきなり手術の話になることはまずありません。一般的な流れを知っておくと安心です。
問診として、困っている症状、いつ頃から気になっているか、これまでの矯正治療歴などを聞かれます。
口腔内検査では、歯並びや噛み合わせの状態を直接確認し、歯型をとる検査が行われます。
画像検査として、顔全体のレントゲン(セファログラム)やCTで、あごの骨の大きさ・位置・左右差を正確に計測します。
顔貌分析では、正面・横顔の写真撮影を行い、あごや顔全体のバランスを分析します。
これらの結果を総合して、「矯正治療だけで改善できるレベルか」「外科手術が必要か」の判断が下されます。診断から治療開始までに数回の通院が必要になることが一般的です。
5. 治療を始める前に知っておきたいこと
顎変形症の治療は、一般的に術前矯正→手術→術後矯正という3段階で進みます。全体で2〜4年程度かかるのが標準的です。
「そんなに長いの?」と驚かれるかもしれませんが、あごの骨の位置を動かしたあとに噛み合わせを安定させるには、この期間が必要です。
治療を検討するにあたって大事なのは、急がないことです。顎変形症は緊急性の高い病気ではありません。複数の医療機関でセカンドオピニオンをもらうことも十分に可能ですし、治療のタイミングを自分のライフスタイルに合わせて決めることができます。
また、保険適用の条件をしっかり確認しておくことも重要です。「顎口腔機能診断施設」に指定された医療機関で治療を受ける必要がありますので、初診時に確認しましょう。
6. まとめ
顎変形症かもしれないと感じたら、まずはセルフチェックで今の状態を確認し、あごに負担をかけない生活習慣を意識してみてください。そのうえで、かかりつけ歯科や専門の医療機関に相談することが大切です。
いきなり手術を迫られることはありません。正しい情報を集めて、自分のペースで治療に向き合うための第一歩を踏み出しましょう。
よくある質問
Q1. 顎変形症の治療は大人になってからでも受けられますか?
回答: はい、受けられます。あごの成長が完了していれば年齢の上限は基本的にありません。30代・40代で治療を始める方も増えています。ただし、全身の健康状態(持病の有無など)によって手術のリスクが変わることがありますので、担当医とよく相談してください。
Q2. セルフケアで顎変形症は改善しますか?
回答: あごの骨格そのものをセルフケアで変えることはできません。ただし、記事で紹介したTCHの改善やあごの安静、ストレッチなどは、あごの痛みやこわばりといった随伴症状を和らげる効果があります。受診までの間のケアとして取り入れてみてください。
Q3. 初診にはどんな準備をしていけばいいですか?
回答: 特別な準備は不要ですが、過去の歯科治療の記録(矯正経験の有無、抜歯歴など)や、お薬手帳があると診察がスムーズです。また、噛み合わせや顔貌で気になる点をメモしておくと、限られた診察時間のなかで伝え漏れを防げます。
Q4. マウスピースは顎変形症に効果がありますか?
回答: 市販のマウスピースが顎変形症を治すことはありませんが、歯科で作るナイトガード(就寝用マウスピース)は、夜間の歯ぎしり・食いしばりからあごの関節を守る効果があります。あごの痛みや朝のこわばりが強い方は、歯科で相談してみてください。
監修:Dr.T
参考文献:
- 日本顎関節学会「顎関節症患者のための初期治療ガイドライン」2018年版
- Okeson JP. Management of Temporomandibular Disorders and Occlusion. 8th ed. Elsevier; 2019.
- 日本矯正歯科学会「矯正歯科治療の保険適用に関する説明」
- Sato FR, et al. Treatment of Class III dentofacial deformity: Combined orthodontic and surgical approaches. J Oral Maxillofac Surg. 2019;77(8):1704-1712.



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