この記事をスマホで読む
目次
- 免許返納後に「困った」と感じるのはどんなとき?
- 車の代わりになる7つの移動手段
- 買い物・通院は「移動しない」選択肢もある
- 自治体の移動支援サービスを活用しよう
- 生活の足を確保するための家族の工夫
- 免許返納前にやっておくべき3つの準備
- まとめ
「免許を返したいけど、買い物も病院も車がないと行けない」「田舎はバスが少ないから返納なんて無理」──免許返納をためらう最大の理由は「返納後の移動手段への不安」です。
しかし、近年は自治体の移動支援サービスやオンデマンド交通、宅配サービスなどが急速に充実しています。車を手放しても、生活に必要な移動をカバーする方法はたくさんあります。
この記事では、整形外科医として多くの高齢患者さんの生活を見てきた視点から、免許返納後の移動手段と生活サポートを具体的にご紹介します。
1. 免許返納後に「困った」と感じるのはどんなとき?
免許返納後に不便を感じやすいのは、主に次の3つの場面です。
通院 ─ 定期的な通院が必要な方にとって、病院への移動手段は最も重要な課題です。特に整形外科のリハビリなど、週に複数回通う必要がある場合は深刻です。
買い物 ─ スーパーやドラッグストアへの日常的な買い物。重い荷物を持って歩く負担も気になるところです。
社会参加 ─ 趣味の集まり、友人との交流、地域の行事など。「行く手段がない」ことで外出をあきらめると、心身の健康に悪影響を及ぼします。
こうした不安を事前に解消しておくことが、前向きな返納につながります。
2. 車の代わりになる7つの移動手段
免許返納後の移動手段は、実は想像以上に選択肢があります。ご自身の生活圏や体力に合ったものを組み合わせて使うのがポイントです。
路線バス・鉄道 ─ もっとも基本的な公共交通機関です。運転経歴証明書を提示すると、運賃割引を受けられる地域も多くあります。時刻表を確認し、よく行く場所へのルートを把握しておきましょう。
コミュニティバス ─ 市町村が運行する地域密着型のバスです。路線バスが通らない住宅地にも停留所が設けられていることが多く、運賃も100〜200円程度と手頃です。
オンデマンド交通(乗合タクシー) ─ 行きたい場所と時間を予約すると、他の乗客と乗り合いで運行するサービスです。タクシーより安く、バスのように時刻に縛られにくいのが特長です。全国の自治体で導入が広がっています。
タクシー ─ ドアtoドアで移動できる最も便利な手段です。免許返納者にはタクシー運賃の割引やチケットの配布を行っている自治体も多くあります。「車の維持費が年間30〜50万円」と考えると、タクシーを月に数回利用しても十分にお得です。
電動アシスト自転車 ─ モーターがペダルの踏み込みを補助してくれるため、坂道でも楽に走れます。近場の買い物や通院に便利で、適度な運動にもなります。体力と運動能力に自信がある方におすすめです。
シニアカー(電動カート) ─ 歩行が困難な方でも座ったまま移動できる電動の乗り物です。道路交通法上は「歩行者」扱いなので、免許は不要で歩道を走れます。介護保険でレンタルできる場合もあります。
家族・知人の送迎 ─ ご家族や近所の方による送迎も大切な移動手段のひとつです。定期的な送迎が難しい場合は、通院日だけ頼む、買い物はまとめて週1回にするなどの工夫で負担を軽減できます。
3. 買い物・通院は「移動しない」選択肢もある
移動手段を考えるだけでなく、「そもそも移動しなくても済む方法」を取り入れるのも有効な考え方です。
食材・日用品の宅配サービス ─ 生協の食材宅配、ネットスーパー、コンビニの宅配サービスなどが充実しています。スマートフォンが苦手な方でも、電話注文やカタログ注文に対応しているサービスも多くあります。免許返納者向けに送料割引やポイント付与をしている事業者もあります。
移動販売車 ─ 地域によっては、食料品や日用品を載せたトラックが定期的に巡回しています。自宅の近くまで来てくれるので、重い荷物を持ち歩く必要がありません。
オンライン診療・訪問診療 ─ 近年、オンラインで医師の診察を受けられるサービスが増えています。慢性疾患の定期的なフォローアップなどは、オンラインで対応できるケースもあります。また、訪問診療を利用すれば、医師が自宅まで来てくれます。
薬の配達サービス ─ 処方薬を自宅まで届けてくれるサービスも広がっています。オンライン診療と組み合わせれば、通院の回数を大幅に減らすことも可能です。
4. 自治体の移動支援サービスを活用しよう
多くの自治体が、高齢者の移動支援に力を入れています。お住まいの地域でどんなサービスが利用できるか、まずは確認してみましょう。
タクシーチケット・利用券の配布 ─ 免許返納者に対して、年間数千〜数万円分のタクシーチケットや利用券を配布している自治体があります。
公共交通機関の割引パス ─ バスや電車のフリーパス、回数券の割引などが用意されている地域もあります。
福祉有償運送 ─ NPO法人や社会福祉協議会が運営する、低価格の移動支援サービスです。介護が必要な方や公共交通機関の利用が難しい方が対象です。
相談窓口 ─ 地域包括支援センターや市区町村の高齢者支援課に相談すると、その地域で利用できるサービスを教えてもらえます。「何があるか分からない」という方は、まず相談してみるのが第一歩です。
5. 生活の足を確保するための家族の工夫
ご家族がサポートする際のちょっとした工夫で、返納後の生活はぐっと快適になります。
移動手段マップを作る ─ 自宅から病院、スーパー、銀行などへの移動手段を一覧にした「移動手段マップ」を作りましょう。バスの時刻表やタクシー会社の電話番号も書き添えておくと便利です。
スマートフォンの使い方をサポートする ─ タクシー配車アプリやバスの乗り換え検索アプリを一緒にインストールし、使い方を教えてあげましょう。大きな文字設定やワンタッチ発信の設定もしておくと安心です。
定期的な送迎のスケジュールを組む ─ 「毎週水曜は通院の送迎」など、あらかじめスケジュールを決めておくと、親御さんも予定が立てやすくなります。
6. 免許返納前にやっておくべき3つの準備
返納を決める前に、以下の3つの準備をしておくと、スムーズに新しい生活に移行できます。
生活圏の移動手段を洗い出す ─ 自宅から半径数キロ以内のバス路線、タクシー会社、コミュニティバスのルートを調べましょう。実際に一度、車を使わずに買い物や通院をしてみる「お試し体験」もおすすめです。
運転経歴証明書の申請準備 ─ 返納と同時に運転経歴証明書を申請すれば、身分証明書の空白期間なく切り替えられます。マイナンバーカードをお持ちの方は「マイナ経歴証明書」の手続きも同時にできます。
車の処分を考える ─ 車を売却する場合、免許返納者にはお米のプレゼントや査定額のアップなどの特典を設けている買取業者もあります。名義変更や保険の解約手続きも忘れずに行いましょう。
まとめ
免許返納後の生活は、事前の準備と情報収集で大きく変わります。タクシー割引やコミュニティバス、オンデマンド交通、宅配サービスなど、車に代わる移動手段や生活サポートは年々充実しています。
「車がないと暮らせない」と思い込まずに、まずはお住まいの地域でどんなサポートが受けられるか、地域包括支援センターや自治体の窓口に相談してみてください。きっと、思っていた以上に選択肢が見つかるはずです。
よくある質問
Q1. 地方に住んでいてバスが1日数本しかありません。それでも返納できますか?
回答: 路線バスだけに頼る必要はありません。オンデマンド交通(乗合タクシー)、タクシーチケットの自治体支援、移動販売車、宅配サービスなどを組み合わせることで対応できるケースが多いです。まずは地域包括支援センターに相談してみてください。
Q2. シニアカー(電動カート)は介護保険で借りられますか?
回答: 要介護2以上の認定を受けている方は、介護保険の福祉用具レンタルとしてシニアカーを利用できる場合があります。月額レンタル料の1〜3割負担で利用できますので、ケアマネジャーに相談してみてください。
Q3. 免許返納後にタクシー代がかさむのが心配です。
回答: 車の維持費は年間30〜50万円ほどかかります。月に換算すると2.5〜4万円です。タクシーを月に数回利用しても、多くの場合は車の維持費よりも安く済みます。自治体のタクシーチケットや割引制度も積極的に活用しましょう。
Q4. 高齢の親にスマートフォンを使わせるのが難しいのですが。
回答: タクシーの電話配車やバスの窓口相談など、スマートフォンを使わなくても利用できるサービスは多くあります。また、生協の食材宅配ではカタログ注文や電話注文にも対応しています。お子さんが代わりにネット注文をしてあげるのも一つの方法です。
監修:Dr.T
参考文献:
- 政府広報オンライン「運転免許証の自主返納について考えてみませんか?」
- 高齢ドライバードットコム「マイカーの代わりとなる移動手段」
- みんなの介護「高齢者の移動手段完全ガイド」
- ハルメク・エイジマーケティング「2025年調査 高齢者の移動手段と自動車免許返納の実態」



コメント