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目次
- 顎変形症ってどんな病気?
- こんな症状に心あたりはありませんか?
- 顎変形症になる原因
- どれくらいの人がかかるの?疫学データ
- 放置するとどうなる?
- まとめ
「噛み合わせがずれている気がする」「顎がしゃくれてきた」「食べ物がうまく噛めない」——そんな悩みを抱えていませんか?
もしかすると、それは顎変形症(がくへんけいしょう)かもしれません。歯並びだけの問題だと思って放置してしまう方が多いのですが、実は顎の骨格そのものに原因がある病気です。
この記事では、顎変形症の症状や原因、どんな人がなりやすいのかを、わかりやすく解説します。
1. 顎変形症ってどんな病気?
顎変形症とは、上あごや下あごの骨の大きさ・形・位置に異常がある状態のことです。いわゆる「受け口」「出っ歯」「顔の左右非対称」なども、程度が大きい場合は顎変形症に該当します。
一般的な歯列矯正(歯だけを動かす治療)では改善が難しく、あごの骨を手術で移動させる「顎矯正手術」が必要になるケースが多いのが特徴です。
ポイントは、これは単なる見た目の問題ではないということ。噛み合わせが大きくずれることで、食事や発音、さらには全身の健康にまで影響が及ぶことがあります。
2. こんな症状に心あたりはありませんか?
顎変形症の症状は、見た目に関わるものから日常生活に支障をきたすものまでさまざまです。
噛み合わせの異常として、前歯で食べ物が噛み切れない、奥歯がうまく噛み合わない、食事に時間がかかるといった症状が代表的です。
顔貌(がんぼう)の変化も目立ちやすいサインです。下あごが前に出ている(受け口・下顎前突)、上あごが前に出ている(出っ歯・上顎前突)、あごが左右どちらかにずれている(顔面非対称)、口が閉じにくいなどの変化がみられます。
発音への影響も見逃せません。サ行・タ行が不明瞭になる、会話中に相手から聞き返されることが増えるといった症状があります。
顎関節の不調として、口を開けるとカクカク音がする、大きく口を開けられない、あごの周りが痛むなどが起こることもあります。
さらに全身への波及として、噛み合わせの不良から首・肩のこり、頭痛、消化不良といった二次的な不調につながるケースも報告されています。
3. 顎変形症になる原因
顎変形症の原因は、大きく分けて遺伝的要因と環境的要因の2つです。
遺伝的要因(もっとも大きな原因)
あごの骨の大きさや形は、かなりの部分が遺伝で決まります。ご両親やご親族に受け口や出っ歯の方がいる場合、お子さんにも同じ傾向が出やすいとされています。日本人を含む東アジア系の人々では、下顎前突(受け口)の出現率がやや高いことが知られています。
成長期のあごの発育異常
思春期の成長スパートの時期に、上あごと下あごの成長バランスが崩れることがあります。たとえば下あごだけが過度に成長すると受け口に、上あごの成長が不十分だと相対的に下あごが目立つ形になります。
環境的要因・習慣
幼少期からの口呼吸の習慣、指しゃぶりや舌を前に突き出す癖(舌突出癖)、頬杖をつく習慣などが、あごの発育に影響を与えると考えられています。ただし、これらだけで顎変形症になるわけではなく、遺伝的な素因に環境要因が加わって発症するケースがほとんどです。
その他の原因
まれに、あごの骨折や腫瘍、関節リウマチ、先天性の症候群(ピエール・ロバン症候群など)が原因となることもあります。
4. どれくらいの人がかかるの?疫学データ
「自分だけがこんな悩みを抱えているのでは」と感じる方もいるかもしれませんが、顎変形症は決してまれな病気ではありません。
日本での調査によると、不正咬合(ふせいこうごう=噛み合わせの異常)を持つ人は全人口の約60〜70%にのぼるとされています。そのうち、矯正治療だけでは対応が難しく外科的手術の適応となる顎変形症は、全体の約5〜10%程度と推定されています。
年齢別にみると、10代後半〜20代前半で診断されるケースが最も多くなっています。これは成長期が終わりに近づき、あごの形が最終的に決まるタイミングと重なるためです。ただし、30代以降で初めて「噛み合わせがおかしい」と気づいて受診される方も少なくありません。
性別では、以前は女性の受診が多い傾向がありましたが、近年は男女差が縮まってきています。これは男性の美意識の変化や、機能面での困りごと(噛めない・顎が痛い)をきっかけに受診するケースが増えたためと考えられます。
国際的にみると、東アジア(日本・中国・韓国)では下顎前突(受け口)型が多く、欧米では上顎前突(出っ歯)型がやや多い傾向が報告されています。
5. 放置するとどうなる?
「見た目が気になるだけだから」と顎変形症をそのままにしておくと、年齢を重ねるにつれていくつかの問題が深刻化する可能性があります。
まず、歯への負担が増すことが挙げられます。噛み合わせが悪い状態が続くと、一部の歯に過度な力がかかり、歯の摩耗やひび割れ、歯周病の進行リスクが高まります。
次に、顎関節症の悪化です。あごの関節に不自然な力がかかり続けることで、慢性的な痛みや開口障害(口が開きにくくなる)が起こるおそれがあります。
また、消化器系への影響も見逃せません。食べ物を十分に噛み砕けないまま飲み込むことで、胃腸への負担が増えます。
さらに、心理的な面では、笑顔に自信が持てない、人前で話すことを避けるなど、生活の質(QOL)の低下につながるケースも少なくありません。
6. まとめ
顎変形症は、あごの骨格に原因がある噛み合わせの病気です。遺伝的な要素が大きく、成長期を過ぎると自然には改善しません。「噛み合わせがおかしいかも」「あごの形が気になる」と感じたら、まずは歯科や口腔外科に相談してみてください。
次の記事では、顎変形症に気づいたときにまずやるべきこと——初期の対処法や受診の目安について詳しくお伝えします。
よくある質問
Q1. 顎変形症は自然に治りますか?
回答: 残念ながら、成長期を過ぎた顎変形症が自然に治ることはほぼありません。あごの骨の位置や大きさの問題なので、歯列矯正だけでは限界があり、多くの場合は外科手術(顎矯正手術)と矯正治療の組み合わせが必要になります。
Q2. 顎変形症は何科を受診すればいいですか?
回答: まずは口腔外科(こうくうげか)や矯正歯科を受診するのがおすすめです。大学病院や総合病院の口腔外科では、手術を含めた総合的な治療計画を立ててもらえます。かかりつけの歯科医院から紹介状を書いてもらうのもよい方法です。
Q3. 顎変形症の治療には保険が使えますか?
回答: はい、顎変形症と診断された場合、矯正治療も含めて健康保険が適用されます。通常の歯列矯正は自費ですが、顎変形症では手術前後の矯正治療、手術、入院費用のいずれも保険の対象になります。ただし、保険適用には指定された医療機関での治療が条件となりますので、事前に確認しましょう。
Q4. 子どもにも顎変形症はありますか?
回答: お子さんにも顎変形症の兆候がみられることはあります。ただし、成長期はまだあごの骨が発育途中のため、確定的な診断や手術は成長がほぼ終わる16〜18歳以降に行われるのが一般的です。早めに矯正歯科で経過を見てもらうことは有効です。
監修:Dr.T
参考文献:
1. 日本矯正歯科学会「顎変形症の診断と治療に関するガイドライン」
2. Proffit WR, Fields HW, Sarver DM. Contemporary Orthodontics. 6th ed. Elsevier; 2018.
3. 日本口腔外科学会「顎変形症に関する疫学調査」
4. Baek SH, et al. Skeletal and dental characteristics in the sagittal, vertical, and transverse dimensions of Class III malocclusion in East Asian populations. Angle Orthod. 2012;82(3):520-528.



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