この記事をスマホで読む
目次
- 肩こりとは? 実は「病名」ではありません
- 肩こりが起きる仕組み ― 筋肉の中で何が起きているのか
- 肩こりを引き起こす6つの原因
- 「たかが肩こり」で済まないケースとは
- まとめ
- よくある質問
1. 肩こりとは? 実は「病名」ではありません
「肩こり」は、日本人のからだの悩みとして常にトップクラスにランクインする症状です。厚生労働省の国民生活基礎調査でも、女性の第1位、男性の第2位に挙げられるほど身近なものです。
ところが意外なことに、「肩こり」は正式な病名ではありません。医学的には、首から肩・背中の上部にかけての筋肉に張りや痛み、重だるさを感じる”状態”のことを指します。つまり、さまざまな原因によって起こる”結果”であり、その裏側には人それぞれ異なる原因が隠れているのです。
まずは「なぜ肩がこるのか」という仕組みを理解することが、自分に合った対策を見つける第一歩になります。
2. 肩こりが起きる仕組み ― 筋肉の中で何が起きているのか
私たちの頭の重さは約4〜6kgあり、ボウリングの球ほどの重さがあります。この重い頭を支えているのが、首から肩にかけての筋肉です。代表的なのが「僧帽筋(そうぼうきん)」という、首の後ろから肩・背中にかけて広がる大きな筋肉です。
肩こりが起きるメカニズムを簡単に整理すると、次のような流れになります。
ステップ1:筋肉が緊張する
長時間同じ姿勢でいたり、ストレスを感じたりすると、肩周りの筋肉がギュッと縮んだ状態(緊張状態)が続きます。
ステップ2:血流が悪くなる
筋肉が緊張して硬くなると、筋肉の中を通る細い血管が圧迫され、血液の流れが悪くなります。
ステップ3:酸素と栄養が届かなくなる
血流が低下すると、筋肉に十分な酸素や栄養素が届かなくなります。いわば「筋肉の酸欠」状態です。
ステップ4:疲労物質がたまる
酸欠状態の筋肉では、乳酸などの疲労物質が作られやすくなり、排出もされにくくなります。
ステップ5:痛みや不快感として感じる
たまった疲労物質が周囲の神経を刺激し、脳が「痛い」「重い」「だるい」と感じるようになります。
さらにやっかいなのは、痛みを感じるとからだが無意識に筋肉を守ろうとして、もっと力を入れてしまうことです。これが「こり→血行不良→痛み→さらにこる」という悪循環を生み出します。
3. 肩こりを引き起こす6つの原因
肩こりの原因はひとつではなく、複数の要因が組み合わさっていることがほとんどです。代表的なものを6つ紹介します。
① 長時間の同じ姿勢(デスクワーク・スマートフォン)
デスクワークやスマートフォンの操作では、どうしても頭が前に出た「前かがみ姿勢」になりがちです。頭が首の真上にあるときに比べて、わずか15度前に傾くだけで首にかかる負荷は約2倍に増えるといわれています。この姿勢が毎日何時間も続けば、肩周りの筋肉が悲鳴を上げるのは当然のことです。
② 運動不足
筋肉は動かすことで血液のポンプ役を果たしています。運動不足になると筋肉を動かす機会が減り、血行が悪くなります。とくに肩甲骨まわりの筋肉は、意識して動かさないと固まりやすい部位です。
③ 精神的なストレス
「ストレスで肩がこる」というのは、気のせいではありません。強いストレスを感じると、自律神経のうち交感神経が優位になり、筋肉を緊張させるホルモンが分泌されます。無意識のうちに肩に力が入り、慢性的な肩こりにつながるのです。
④ 冷え・エアコン
からだが冷えると血管が収縮し、血流が悪くなります。夏場でもエアコンの冷気が直接肩に当たる環境では、筋肉が冷やされて硬くなりやすくなります。
⑤ 眼精疲労
パソコンやスマートフォンの画面を長時間見続けると、目の周りの筋肉が疲労します。目と首・肩の筋肉は神経でつながっているため、眼精疲労が肩こりを引き起こすことがあります。
⑥ 骨格や体型の影響
なで肩の方は、肩を支える筋肉に負担がかかりやすく、肩こりになりやすい傾向があります。また、猫背気味の方も、首や肩の筋肉に余計な負荷がかかるため要注意です。
4. 「たかが肩こり」で済まないケースとは
多くの肩こりは筋肉の緊張や血行不良が原因ですが、なかにはからだの病気が隠れているケースもあります。以下のような場合は、自己判断せずに医療機関を受診することをおすすめします。
- 安静にしても痛みがまったく引かない、あるいは夜間に痛みで目が覚める
- 腕や手にしびれが出る ― 頸椎(けいつい:首の骨)の問題が疑われます
- 片方の肩だけが急に痛くなった ― 肩関節の疾患や、まれに内臓の病気の可能性も
- 頭痛やめまい、吐き気をともなう ― 高血圧や脳の病気が原因の場合があります
- 発熱がある ― 感染症などの可能性を考える必要があります
- 数週間以上、セルフケアでまったく改善しない
とくに30代〜60代の方は、加齢にともなう頸椎の変化(頸椎症など)や、四十肩・五十肩(肩関節周囲炎)との鑑別が大切です。「年のせい」と決めつけず、症状が長引く場合は整形外科に相談してみてください。
5. まとめ
肩こりは、筋肉の緊張→血行不良→疲労物質の蓄積→痛みという一連の流れで起こります。その原因は姿勢、運動不足、ストレス、冷え、眼精疲労、体型などさまざまです。
「仕組み」を知ることで、「自分の肩こりの原因は何だろう?」と考えるきっかけになれば幸いです。原因が分かれば、おのずと効果的な対策も見えてきます。
次の記事では、自宅で今日からできる具体的なセルフケアとストレッチをご紹介しますので、ぜひあわせてお読みください。
よくある質問
Q1. 肩こりは日本人だけの悩みですか?
回答: 「肩こり」という表現は日本語特有ですが、肩周りの痛みや張りは世界中で見られる症状です。英語では”neck and shoulder pain”と呼ばれ、デスクワークが多い国では共通の健康課題となっています。日本人は骨格的に欧米人より頭を支える筋肉量が少ない傾向があり、肩こりを感じやすいともいわれています。
Q2. 肩こりは体質で決まるものですか?
回答: 体質的な要素(なで肩、筋肉量の少なさなど)は確かに影響しますが、それだけで肩こりになるわけではありません。姿勢の改善、適度な運動、ストレスケアなど、日々の生活習慣を見直すことで、体質に関係なく症状を軽減できるケースがほとんどです。
Q3. 肩こりがひどくなると、どんな症状につながりますか?
回答: 慢性的な肩こりを放置すると、緊張型頭痛やめまい、集中力の低下、睡眠の質の低下などにつながることがあります。また、筋肉の硬さが増すことで肩関節の可動域が狭くなり、腕が上がりにくくなることもあります。早めのケアで悪循環を断ち切ることが大切です。
Q4. マッサージに行けば肩こりは治りますか?
回答: マッサージは筋肉の緊張をやわらげ、血行を改善する効果があり、一時的な症状の緩和には有効です。ただし、肩こりの「根本的な原因」(姿勢、運動不足、ストレスなど)が改善されなければ、繰り返すことになります。マッサージと並行して、原因に対するセルフケアを行うことが重要です。
監修:Dr.T(整形外科専門医)
参考文献:
- 日本整形外科学会「肩こり」症状・病気をしらべる
- 厚生労働省 国民生活基礎調査
- 健康長寿ネット「肩こりに効く体操とは」



コメント