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目次
- 肉離れとは? ― 筋肉に起きていること
- なぜ肉離れが起きるのか ― 主な原因
- 肉離れの症状と重症度の見分け方
- まずやるべき応急処置(POLICE処置)
- こんなときは迷わず受診を
- まとめ
- よくある質問
運動中に太ももやふくらはぎに「バチッ」という痛みが走った経験はありませんか? それ、肉離れかもしれません。肉離れはスポーツをする方だけでなく、日常生活でも起こりうるケガです。この記事では、整形外科医の視点から肉離れの原因・症状・応急処置までをわかりやすくお伝えします。
1. 肉離れとは? ― 筋肉に起きていること
肉離れとは、正式には筋挫傷(きんざしょう)と呼ばれ、筋肉の繊維が部分的、あるいは完全に断裂してしまう状態です。
筋肉は細いゴムひものような「筋繊維」が束になってできています。急に強い力がかかったり、無理に伸ばされたりすると、この筋繊維が耐えきれずに切れてしまいます。これが肉離れです。
とくに多いのが太ももの裏(ハムストリングス)とふくらはぎ(腓腹筋)の肉離れです。この2つの部位で全体の約7〜8割を占めるといわれています。
2. なぜ肉離れが起きるのか ― 主な原因
肉離れが起きやすい状況には、いくつかの共通点があります。
急な動き出しや方向転換
ダッシュやジャンプなど、瞬間的に大きな力が筋肉にかかる動作が最も多い原因です。週末だけスポーツをする「週末アスリート」の方にとくに多く見られます。
ウォーミングアップ不足
筋肉が温まっていない状態では柔軟性が低く、急な動きに対応できません。寒い季節に起きやすいのもこのためです。
筋肉の疲労や柔軟性の低下
疲れがたまった筋肉は通常より硬くなり、断裂しやすくなります。また、加齢やストレッチ不足で柔軟性が落ちている方もリスクが高まります。
水分・ミネラル不足
脱水状態では筋肉がけいれんしやすく、肉離れにつながることがあります。
3. 肉離れの症状と重症度の見分け方
肉離れは痛みの程度によって、一般的に3つの重症度(グレード)に分けられます。
軽度(Ⅰ度):筋繊維の微細な損傷
痛みはあるものの歩行は可能で、腫れも軽い状態です。「筋肉がピキッとした」程度で、数日〜2週間ほどで回復することが多いです。
中等度(Ⅱ度):筋繊維の部分断裂
はっきりとした痛みがあり、歩くのが辛くなります。内出血(あざ)が出ることも多く、回復には3〜6週間ほどかかります。患部を触ると凹みを感じることがあります。
重度(Ⅲ度):筋繊維の完全断裂
激しい痛みで歩行困難になり、大きな腫れや内出血が現れます。筋肉に明らかな凹みが見られ、回復には数か月を要します。手術が必要になるケースもあります。
自分では重症度の判断が難しいので、痛みが強い場合は整形外科を受診して、超音波検査やMRI検査で正確に評価してもらうことが大切です。
4. まずやるべき応急処置(POLICE処置)
肉離れが起きたら、以下の応急処置をできるだけ早く行いましょう。最近では、かつてのRICE処置に加え、早期の適切な負荷を推奨するPOLICE処置が主流になっています。
P(Protection):保護
まずは患部をこれ以上傷つけないようにしましょう。運動を中止し、無理に動かさないことが第一です。
OL(Optimal Loading):最適な負荷
完全に安静にするのではなく、痛みが許す範囲で軽い動きを取り入れます。これにより組織の修復が促進されるとされています。ただし無理は禁物で、痛みが増す動きは避けてください。
I(Ice):冷却
氷のうやアイスパックを患部にあて、15〜20分ほど冷やします。これを2〜3時間おきに繰り返します。冷やしすぎによる凍傷を防ぐため、タオルを1枚はさみましょう。
C(Compression):圧迫
弾性包帯やサポーターで患部を適度に圧迫します。腫れの広がりを抑える効果があります。しびれや変色が出るほどきつく巻かないよう注意してください。
E(Elevation):挙上
患部を心臓より高い位置に上げることで、腫れや内出血を軽減します。足の肉離れなら、横になってクッションや枕の上に足を乗せるとよいでしょう。
受傷後48時間以内の初期対応が回復の速さに大きく影響します。「まあ大丈夫だろう」と放置すると、回復が遅れるだけでなく再発しやすくなるのでご注意ください。
5. こんなときは迷わず受診を
以下のような場合は、自己判断せず整形外科を受診しましょう。
- 歩けないほどの強い痛みがある
- 患部に明らかな凹みや変形がある
- 内出血(あざ)が広範囲に広がっている
- 2〜3日経っても痛みがまったく改善しない
- 同じ箇所を繰り返し痛めている
超音波検査やMRI検査で損傷の範囲を正確に把握し、重症度に合った治療を受けることが、早く安全に回復するための近道です。
6. まとめ
肉離れは、筋肉の繊維が断裂するケガで、スポーツ中だけでなく日常のふとした動作でも起こります。「バチッ」「ピキッ」という痛みを感じたら、まずはPOLICE処置で適切に対応することが回復への第一歩です。痛みが強い場合や改善しない場合は、早めに整形外科を受診してくださいね。
よくある質問
Q1. 肉離れと「つる(こむら返り)」はどう違いますか?
回答: つる(こむら返り)は筋肉が異常に収縮するけいれん状態で、筋繊維の断裂は起きていません。数秒〜数分で治まることがほとんどです。一方、肉離れは筋繊維が実際に切れているため、痛みが長く続き、腫れや内出血を伴うことがあります。
Q2. 肉離れのとき、湿布を貼ってもいいですか?
回答: 受傷直後は冷却が優先なので、まずはアイシングを行いましょう。その後、消炎鎮痛効果のある湿布を使うことは問題ありません。ただし、湿布だけで治そうとせず、痛みが強い場合は整形外科を受診してください。
Q3. 肉離れを放置するとどうなりますか?
回答: 適切な処置をせずに放置すると、断裂した筋繊維がきちんと修復されず、硬い瘢痕組織(はんこんそしき)に置き換わってしまうことがあります。すると筋肉の柔軟性が低下し、同じ場所で再発しやすくなります。軽度でも初期対応が大切です。
Q4. 肉離れは冷やすべきですか、温めるべきですか?
回答: 受傷直後〜48時間程度は冷やすのが基本です。炎症と腫れを抑えることが最優先だからです。48時間以降、急性期を過ぎたら温めることで血流が促進され、回復が早まります。切り替えのタイミングがわからない場合は、医師に相談してください。
監修:Dr.T
参考文献:
1. 日本整形外科学会「スポーツ外傷の応急処置」
2. Mueller-Wohlfahrt HW, et al. “Terminology and classification of muscle injuries in sport.” Br J Sports Med. 2013;47(6):342-350.
3. Bleakley CM, et al. “PRICE needs updating, should we call the POLICE?” Br J Sports Med. 2012;46(4):220-221.


