腰椎椎間板ヘルニアの症状──腰だけじゃない!脚のしびれ・痛みのパターンを知ろう

椎間板ヘルニア②アイキャッチ画像 腰椎椎間板ヘルニア

シリーズ「腰椎椎間板ヘルニアを正しく知ろう」
第1回:病態編|第2回:症状編(この記事)|第3回:治療編

1. ヘルニアの症状=「神経が押されるサイン」

前回の記事で、腰椎椎間板ヘルニアは「椎間板の中身が飛び出して神経を圧迫する病気」とお伝えしました。今回は、神経が圧迫されることで具体的にどんな症状が出るのかを詳しくお話しします。

「腰が痛い=ヘルニア」と思いがちですが、実はヘルニアの最大の特徴は腰よりも脚に出る症状です。腰痛だけの場合、原因はヘルニア以外のことも多いのです。

2. 代表的な症状パターン──どこに出る?

坐骨神経痛(ざこつしんけいつう)

もっとも代表的な症状です。お尻から太ももの裏側、ふくらはぎ、足先にかけて、電気が走るような鋭い痛みやしびれが出ます。「坐骨神経」という太い神経に沿って症状が広がるため、この名前がついています。

痛みの性質は人によってさまざまです。「ビリビリ電気が走る」「ズキズキ痛む」「じんじんしびれる」「足が冷たく感じる」──いずれも神経が圧迫されているサインです。

坐骨神経痛の走行図:お尻から太もも裏、ふくらはぎ、足先にかけてオレンジ色の痛みラインが走っている
坐骨神経痛:お尻から脚にかけて走る痛みのライン

片側に出ることが多い

ヘルニアは椎間板の左右どちらか一方に飛び出すことが多いため、症状も片方の脚だけに出るのが一般的です。ただし、大きなヘルニアが中央に飛び出した場合は、両脚に症状が出ることもあります。

姿勢や動作で変化する

ヘルニアの痛みは、姿勢によって大きく変わります。前かがみの姿勢で悪化しやすく、横になると楽になることが多いです。これは、前かがみになると椎間板の前方に圧力が集中し、後方への髄核の押し出しが強まるためです。

具体的には、靴下を履く、顔を洗う、くしゃみをするといった動作で「ズキン!」と痛みが走ることがあります。長時間の座り仕事のあとに立ち上がろうとして痛むパターンも典型的です。

3. 押される神経で変わる──症状の「地図」

腰椎の何番目でヘルニアが起きているかによって、症状が出る場所が変わります。これを「デルマトーム(皮膚分節)」の知識で理解できます。簡単にいうと、「どの神経がどの場所を担当しているか」の地図のようなものです。

L4神経根が圧迫された場合
太ももの前面〜すねの内側にしびれや痛みが出ます。膝を伸ばす力が弱くなり、階段の上り下りがつらくなることがあります。

L5神経根が圧迫された場合(最多)
すねの外側から足の甲、親指にかけてしびれや痛みが出ます。足首やつま先を上に持ち上げる力が弱くなり、「スリッパが脱げやすい」「つまずきやすい」と感じることがあります。これを医学用語で「下垂足(かすいそく)」といいます。

S1神経根が圧迫された場合
ふくらはぎの外側から足の裏、小指側にしびれや痛みが出ます。つま先立ちがしにくくなったり、アキレス腱反射が弱くなったりします。

4. 自分でチェック!SLRテストとは

ヘルニアの可能性を自分で簡易的にチェックする方法があります。SLRテスト(下肢伸展挙上テスト)というもので、整形外科の診察でも必ず行う基本的な検査です。

やり方は簡単です。仰向けに寝て、膝をまっすぐ伸ばしたまま、痛みのある側の脚をゆっくり持ち上げてもらいます(自分で上げるのではなく、ご家族に持ち上げてもらうのが理想です)。脚が30〜70度あたりまで上がったところで、太もも裏からふくらはぎにかけてビリッとした痛みやしびれが走る場合、ヘルニアによる神経圧迫の可能性があります。

ただし、このテストだけで確定診断はできません。あくまで「受診の目安」として参考にしてください。

5. 自分でできる簡易チェックリスト

以下の項目に当てはまるものがあるかチェックしてみてください。複数当てはまる場合は、腰椎椎間板ヘルニアの可能性があります。 痛みの特徴について:
  • 腰の痛みと一緒に、お尻や足にも痛み・しびれがある
  • 前かがみになると痛みが強くなる
  • くしゃみや咳をすると腰から足に痛みが走る
  • 長時間座っていると症状が悪化する
しびれについて:
  • 片方の足だけにしびれがある
  • 足の特定の場所(すね、足の甲、足の裏など)がしびれる
  • 足の一部の感覚が鈍い
動作について:
  • 足の指に力が入りにくい
  • スリッパが脱げやすくなった
  • つまずきやすくなった
  • 長く歩くと足の痛みやしびれが増す
これらはあくまで簡易的なチェックです。当てはまる項目がある方は、整形外科での正確な診断を受けることをおすすめします。

6. 危険信号──すぐに受診すべき症状

ヘルニアの症状の多くは、時間とともに自然に改善していきます。しかし、以下のような症状が出た場合は、すぐに整形外科を受診してください。

足の力が入らない(筋力低下):つま先やかかとが持ち上がらない、階段を上れない、スリッパが脱げるといった症状です。神経のダメージが進行しているサインです。

排尿・排便の異常(膀胱直腸障害):おしっこが出にくい、残尿感がある、尿漏れする──これらは「馬尾症候群(ばびしょうこうぐん)」という重い状態の可能性があり、緊急手術が必要になることがあります。

会陰部のしびれ:お尻の穴の周りや股のあたりの感覚がなくなる場合も馬尾症候群を疑います。

急激に悪化する両脚のしびれ・筋力低下:片側だった症状が急に両側に広がった場合は要注意です。

7. 症状が似ている他の病気との見分け方

腰痛や足のしびれは、ヘルニア以外の病気でも起こります。代表的なものをご紹介します。 腰部脊柱管狭窄症——背骨の中の神経の通り道(脊柱管)が狭くなる病気です。ヘルニアとの大きな違いは、「歩いていると足がしびれてきて、休むと楽になる」という「間欠性跛行(かんけつせいはこう)」が特徴的であること。また、前かがみになると楽になる点もヘルニアとは逆です。50代以降に多い病気です。 梨状筋症候群——お尻の深い部分にある梨状筋が坐骨神経を圧迫する病気です。症状はヘルニアと似ていますが、MRIでヘルニアが見つからない場合に疑われることがあります。 腰椎すべり症——腰の骨が前後にずれることで神経を圧迫する病気です。レントゲンやMRIで診断されます。

これらの病気との鑑別は、自分だけで判断するのは難しいため、整形外科でMRIなどの検査を受けて正確に診断してもらうことが重要です。

8. まとめ

腰椎椎間板ヘルニアの代表的な症状は、腰痛よりもむしろ片側の脚の痛み・しびれ(坐骨神経痛)です。どの神経が圧迫されるかによって、症状が出る場所が変わります。前かがみで悪化し、横になると楽になるのが特徴です。

SLRテストで簡易チェックはできますが、足の筋力低下や排尿障害が出た場合は放置せず、すぐに受診してください。次回の第3回では、「保存療法から手術、リハビリまで──どうやって治すのか」を詳しく解説します。


よくある質問

Q1. しびれだけで痛みがない場合もヘルニアですか?

回答:はい、しびれだけの症状もヘルニアで起こりえます。神経の圧迫の仕方や程度によって、痛みが主体になるケースとしびれが主体になるケースがあります。しびれが持続する場合は、一度整形外科で診察を受けることをおすすめします。

Q2. ヘルニアの痛みとお尻の筋肉の痛み(梨状筋症候群)はどう見分けますか?

回答:どちらもお尻から脚にかけての痛みが出るため、ご自身で見分けるのは難しいことがあります。ヘルニアは前かがみで悪化しやすいのに対し、梨状筋症候群は座っているときにお尻の深部が痛みやすいという傾向があります。正確な鑑別にはMRI検査や神経学的診察が必要ですので、専門医にご相談ください。

Q3. 咳やくしゃみで脚に痛みが走るのはなぜですか?

回答:咳やくしゃみをすると、お腹に力が入って脊柱管内の圧力が一時的に上昇します。これにより、ヘルニアによって圧迫されている神経への刺激が一瞬強まるため、脚に鋭い痛みが走るのです。この症状がある場合、ヘルニアの可能性がかなり高いと考えられます。


Q4. ヘルニアの症状はどれくらいの期間続きますか?

回答: 個人差がありますが、多くの場合は3〜6か月程度で症状が自然に軽減します。これは、飛び出した椎間板が体内の免疫細胞によって少しずつ吸収されるためです。ただし、症状が強い場合や改善が見られない場合は、積極的な治療が必要になることもあります。

Q5. しびれが残っている場合、それは後遺症ですか?

回答: 軽いしびれが残ることはありますが、日常生活に支障がなければ大きな心配はいりません。ただし、しびれが強くなっている、範囲が広がっている、筋力が落ちてきたなどの変化がある場合は再度受診してください。神経の圧迫が長期間続くと回復しにくくなることがあるため、変化を見逃さないことが大切です。

監修:Dr.T(整形外科専門医)

参考文献:
1. 日本整形外科学会「腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン 2021」
2. Konstantinou K, Dunn KM. Sciatica: review of epidemiological studies and prevalence estimates. Spine. 2008;33(22):2464-2472.
3. Todd NV. Cauda equina syndrome: the timing of surgery probably does matter. Br J Neurosurg. 2005;19(4):301-306.

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